名古屋市工業研究所

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研究報告

平成20年度研究報告

重点事業 (1テーマ)

事業名 めっき皮膜の熱加工性向上技術の開発
担当 [材料化学部]:加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀、小野さとみ、柘植弘安、高橋鉱次、福田博行
補助事業名 公設工業試験研究所の設備拡充補助事業〈(財)JKA〉

1.目的

自動車関連産業において金属製部品を組み立てる際、溶接やろう付けなどの熱加工処理が行われ、このような熱加工処理に伴ってめっきが施された部品にめっき膨れや剥離が発生して問題となっている。一方、電子機器産業においては、低融点金属を金属上に被覆し長時間経過した場合、金属/金属界面における原子拡散に伴う結晶組織や組成変化によってウィスカーが発生し、短絡による故障を引き起こすことがあり、それらの対策は喫緊の課題である。本事業では、金属/金属界面の熱加工処理等に伴う界面構造変化の評価技術を確立し、膨れや剥離などの欠陥発生との関連性を検討して、企業における品質の向上や、安全で安心なものづくり技術の向上を支援することを目的とする。本研究では、「鉄鋼上ニッケルめっき製品のろう付けに伴う膨れ発生」を取り上げ、膨れ発生のメカニズムの解明と対策技術の確立を図る。

2.内容

不良解析において断面観察は極めて有用な手法である。めっき製品においては膨れやはがれの発生箇所の特定や発生原因を調査する上で欠かせない手法であるが、従来の機械研磨による断面サンプルの作製方法では欠陥部の破壊や研磨材の混入などにより精密な断面観察が困難であった。本事業ではより正確な断面試料作製を可能にするために、無歪で加工できるイオンビームを用いた断面試料作製装置と小型サンプルの作製に適した試料トリミング装置を導入した。ニッケルめっきのろう付け事故品および再現実験試料の断面観察をX線分析機能付高分解能走査電子顕微鏡により行い、不良発生状況の調査および金属組織変化を評価する。

3.成果

事故品において膨れはめっき皮膜のほぼ中央で発生していた。膨れ発生部よりも基材側では鉄の拡散層が確認されるが、表面側では鉄の拡散は認められなかった。同一サンプルで膨れの発生していない箇所ではこのような不連続変化は観察されなかった。一方再現実験の結果、鉄の拡散領域は30μmであり、それより薄いめっき処理品の場合は拡散が表面まで達しており事故品のような不連続変化は確認されなかった。事故品では合金層形成前にめっき層に未着部が生じており、その部分が熱処理に伴う熱応力の発生により顕在化したものと推測される。

4.設置機器

機器名称 型式・性能 製造所名 設置年月日
X線分析機能付高分解能走査電子顕微鏡 S­4800 (株)日立ハイテクノロジーズ H20.10.6
断面試料作製装置 E­3500 (株)日立ハイテクノロジーズ H20.10.6
試料トリミング装置 EM­TXP ライカマイクロシステムズ(株) H20.11.13

重点研究、共同研究および指定研究(コア技術21テーマ)○:主担当
コア技術名 1.機械診断における予知保全システム技術

研究題目 機械診断を補助する簡易予知保全システムの開発
研究区分 指定
研究者 (機械金属部)○山岡充昌、松下聖一、真鍋孝顯、深谷聡、児島澄人
研究概要

1.目的

機械の保全方式として、時間基準でなく状態基準で管理する予知保全が注目されている。しかし、導入コストや診断技術者の不足により、予知保全の導入は進んでいない。そこで、劣化傾向管理に熟練者の経験を生かし、機械の状態把握を容易にする簡易予知保全システムの開発を目指す。

2.内容

大型設備が多数稼働する状態における信号計測技術の精度向上として、各種雑音除去技術(フィルタ処理)(デジタル・アナログ)を適用し、その特性・傾向について検討した。また、新しい解析法として、突発的な振動現象など複雑波形の信号に適したウェーブレット解析について検討した。

3.考察

大型設備の簡易診断には、フィルタ処理を用いた振動法が適しており、特徴パラメータを利用した振動表示方法は、視覚的に傾向を捉えやすいため、簡易解析ツールとして有効であった。また、断続的に発生する特徴信号に対して、ウェーブレット解析が有用であることも確認できた。

コア技術名 2.金属材料の利用技術および不良等原因解析

研究題目 セラミックスの耐熱部品および耐磨耗部品への応用に関する研究
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
研究者 (機械金属部)○橋井光弥、山田博行、山田隆志、内藤寛
研究概要

1.目的

耐熱性に優れるだけでなく容易に機械加工できるセラミックス(マシナブルセラミックス)の製造技術を開発する。従来法よりも環境負荷を大幅に削減して低コストで製造する技術を確立する。本材料は例えば「熱処理・鋳造設備向けのセラミックス部材」としての利用が期待できる。

2.内容

長石をバインダーとして低純度(高酸素濃度)h­BN粉末の焼結を行った。従来技術では窒素雰囲気で1900K以上で加圧焼結する必要があったのを、前年度は大気中・無加圧・低温(1473K)での焼結を実現した。加えて、焼結体強度を従来品の数倍にアップさせた。本年度は、焼結体の更なる低コスト化を目指した。

3.考察

長石を前処理することで、焼結温度を前年度よりも100K低い1373Kとすることができた。同時に、焼結体強度が前年度サンプルに比べて約1割アップした。特許出願を行った。

コア技術名 3.マグネシウムを主とした軽量金属材料の利用技術

研究題目 マグネシウム合金板材の高機能化と成形に関する研究
研究区分 指定
研究者 (機械金属部)○毛利猛、山崎実、川尻鉱二、松井則男、山岡充昌
研究概要

1.目的

マグネシウムの部品を開発するうえで、競争力を高めるためにはコスト面や機能面などの付加価値を与える必要がある。本研究では、板材の成形と成形体への充填材を利用した軽量で比強度・比剛性の高いマグネシウム部材の開発を行い、マグネシウム合金の特性(軽量、高比強度、リサイクル性など)を活かした実用品への応用を目指す。

2.内容

直径30mmのAZ91またはAZ31マグネシウム合金の鋳造材を、温度300℃または400℃で熱間鍛造を行い鍛造板を作製する。これらから、顕微鏡組織の観察、X線回折装置を利用したシュルツの反射法による集合組織の測定および引張試験など諸特性の測定を行った。

3.成果

どちらのマグネシウム合金においても、温度300℃または400℃で鋳造材からの直接熱間鍛造が可能であり、直径70mm,厚さ1.5mm程度の円形の鍛造板を作製できた。これらの鍛造板について、合金種や鍛造温度の違いと、顕微鏡組織,集合組織および引張特性の関係をおおよそ明らかにし、同一板内では、位置や方向による諸性質の差がほとんどない等方的な材料であることがわかった。

コア技術名 4.CAEを用いたシミュレーション技術

研究題目 部分軟化アルミニウム合金板の容器成形に関する研究
研究区分 重点
研究者 (機械金属部)○西脇武志、黒部文仁、村田真伸
研究概要

1.目的

自動車軽量化を促進させるため、汎用プレス機で加工可能なアルミニウム合金板の成形法を開発している。これまで部分軟化成形法によってアルミニウム合金板で深絞り性や張り出し性が向上することを確認してきた。今年度は周辺技術の検討と実部品を対象とした試作性の検討を行った。

2.内容

周辺技術として部分軟化熱処理による穴広げ性の検討を行った。また、実部品を対象に試作工程の検討を行い、板厚が異なる場合の部分軟化条件の確認を行った。さらに試作工程中の2工程の成形を取り上げ、成形可能な形状範囲を調査した。

3.成果

5182半硬質材は、部分軟化熱処理のような短時間の熱処理でも焼鈍材と同等程度に穴広げ性が向上した。部分軟化は、異なる板厚での熱伝導解析によって見出した温度条件で熱処理し、ほぼ同様の硬さ分布を持つ板が得られた。また、2工程成形で成形可能な形状範囲を確定した。

コア技術名 5.表面処理応用技術

研究題目 めっき皮膜の熱加工性向上技術の開発
研究区分 重点
研究概要 重点事業のとおり
研究題目 新しい亜鉛合金めっき技術の開発
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○三宅猛司、加藤雅章、松本宏紀、橋鉱次
研究概要

1.目的

亜鉛合金めっきは、鉄の防食として様々なところに用いられている。現在、亜鉛合金めっきでは後処理として3価クロムを用いた化成処理が施されているが、その化成処理膜から規定量以上の6価クロムが検出される報告がある。このような問題に対する対応として幾つかの手法があるが、亜鉛合金めっき後の後処理フリー化を目的として、亜鉛­マンガン合金めっきおよび亜鉛­ニッケル合金めっきの開発を行った。

2.内容

本目的を達成するため、めっき浴組成および電解条件の最適化を図った。昨年度までの結果を踏まえ、亜鉛­マンガン合金めっきおよび亜鉛­ニッケル合金めっきではそれぞれ塩化物浴を用い、電解条件の最適化について検討を行った。さらに、得られた皮膜の組成、析出相の同定、耐食性評価について検討を行った。

3.成果

亜鉛­マンガン合金めっきでは、支持塩として塩化カリウムと塩化アンモニウムを併用し、パルス電解を適用することで析出電流密度にあまり依存しない均質なめっき膜が得られ、この時の膜中のマンガン組成は8〜18wt.%であった。耐食性評価を塩水噴霧試験で行ったところ、200時間で赤錆の発生が認められた。
亜鉛­ニッケル合金めっきでは、パルス電解を適用することで直流電解と比べ、平滑で高ニッケル含有の膜が得られた。平均電流密度の増加に伴い膜中のニッケル含有量は25wt.%から18wt.%へと低下し、これらの膜は主にγ相であった。耐食性評価を塩水噴霧試験で行ったところ(膜厚7μm)、960時間で赤錆が認められた。

研究題目 銅−スズ合金めっきをニッケル代替として利用した新しい装飾めっきの開発
研究区分 共同(愛知県鍍金工業組合)
研究者 (材料化学部)○加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀
研究概要

1.目的

装飾ニッケル/クロムめっきは優れためっき処理であるが、近年ニッケルめっきについては金属アレルギーが、クロムめっきについては6価クロムの使用が問題になっているため、それぞれの代替めっき技術が求められている。本研究ではニッケル代替として銅­スズ合金めっ き、装飾クロムめっき代替にはスズ­コバルト系合金めっきに着目して開発を行った。

2.内容

銅­スズ合金めっきでは最適なCu40wt%Snの皮膜が得られるめっき浴を開発し、より広い電流密度域で均質な皮膜が作製できるように浴組成の最適化を図った。スズ­コバルト系合金めっきでは硬度・耐食性などの皮膜特性向上を目指して第3元素の添加の効果を調査した。

3.成果

ニッケル代替として銅­スズ合金めっきが有望であり、食品添加物のトリポリリン酸ナトリウムを主成分としためっき浴を開発した。また装飾クロムめっき代替として有用なスズ­コバルト系合金硫酸めっき浴を開発した。第3元素として硫酸鉄の添加が有効であり、皮膜の結晶構造は層状構造となり、より平滑な皮膜を得ることができた。

研究題目 機能性有機・無機ハイブリッド皮膜によるコーティング技術の開発
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○小野さとみ、柘植弘安
研究概要

1.目的

化学溶液法を用いて、シリカ等の無機成分と樹脂や有機シラン化合物等の有機成分の組成を制御してハイブリッド化することで、セラミックス、金属および木材等の材料表面に、親水・撥水性、耐擦傷性等の機能を有した、サブミクロンの薄膜から数十ミクロンの厚膜まで対応可能な有機・無機ハイブリッド皮膜の作製に関する技術開発を行う。

2.内容

テトラエトキシシランとリン酸トリエチルを出発原料として、親水性の高いホスホシリケート皮膜の作製のための溶液調製法を開発した。

3.成果

テトラエトキシシランとリン酸トリエチルより作製したホスホシリケートコーティング溶液の組成及び作製皮膜の加熱処理温度を最適化することにより、ソーダ石灰ガラス及びSUS304上に接触角が10°以下の親水性を示し、防汚性を有するサブミクロンのコーティング皮膜を作製することができた。皮膜の最表層にはPは存在せず、SiとOからなる層であることがわかった。親水性を示す皮膜ではSiとOの化学結合状態が親水性を示さない皮膜とは著しく異なっており、それが親水性を示す要因と推測される。

コア技術名 6.光触媒応用技術

研究題目 酸化チタン光触媒を利用した水処理システムにおける各種影響因子の解明
研究区分 共同(名古屋大学)
研究者 (材料化学部)○大岡千洋、岸川允幸、小野さとみ
研究概要

1.目的

酸化チタン光触媒水処理に影響する各種の影響因子を体系的に明らかにし、個々の応用目的に応じた光触媒水処理システムの設計指針を明らかにする。

2.内容

水中有害有機物質の光触媒分解反応における共存無機イオンの影響を体系的に調べた。酸化チタン固定化ガラスビーズを用いた流通循環式反応系で、主に、ビスフェノールAの光触媒分解反応におけるCl­、SO42­-等の共存陰イオンの影響を調べた。また、河川・湖沼・下水処理水の実環境水を用いて同様の実験を行った。

3.成果

SO42­-が共存した場合に光触媒分解反応の促進が観測された。ラジカル捕捉剤であるジメチルスルホキシドを対象とした実験から、この促進効果は活性ラジカル種の増加によることが明らかとなったが、ESR測定より、増加しているのはOHラジカルでないことがわかった。また、活性炭処理した下水処理水中でのビスフェノールAの光触媒分解反応においても、SO42-­添加による促進効果が観測された。多数の無機塩が混入している水でも反応が促進することから、実環境水においても、SO42­-の添加が酸化チタン光触媒水処理性能を向上させる上で有効であることがわかった。

コア技術名 7.化学分析・化学計測技術

研究題目 環境対応型新材料および有害微量成分の分析評価技術の開発
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○酒井光生、大橋芳明、野々部恵美子、木下武彦、小野さとみ
研究概要

1.目的

本研究では、鉛レス銅合金など環境規制の強化に伴って登場してきた新素材の主要成分及び微量成分の分析法を開発し、社内標準試料の値付けや品質管理分析などに適用して、中小鋳物業者等における製品の品質向上を支援することを目的としている。

2.内容

本年度は鉛レス青銅の主要元素の定量において未解決の問題であるスズの定量法の検討、並びに鉛フリーはんだ中の主要成分の銀の定量法について検討した。鉛レス青銅中のスズの定量法では、JIS H1052メタスズ酸沈殿分離アルミニウム・ニッケル還元ヨウ素酸カリウム滴定法に従って定量すると、還元の際ニッケル板の上にビスマスがメッキ状に析出して還元を妨害し、スズの値が低値になる。このため、還元法を工夫してビスマスのメッキ状析出を防ぎ、正確な値となる定量法を検討した。鉛フリーはんだ中の主要成分である銀の分析法の検討では、主成分のスズをメタスズ酸として分離し、ろ液の銀をICP法で定量する方法について検討した。

3.成果

鉛レス青銅中のスズの定量法では還元法を改良し、アルミニウムでビスマスを還元析出させた後ニッケルでスズを還元する方法をMBH社の標準試料で検証し、正確なスズの定量ができる方法を確立した。鉛フリーはんだ中の銀の定量では、大量に存在するメタスズ酸の沈殿はいろいろな元素を吸着して妨害するが、100mg程度なら加温して沈殿をこしわければ銀は吸着されず、ろ液をICP法で定量すれば正確な値となる定量法を確立した。

コア技術名 8.プラスチック技術

研究題目 光・電子・イオン機能を有する新規高分子材料の開発
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○林英樹、石垣友三、山中基資
研究概要

1.目的

一般に、電子デバイスの構成材料として有機材料を用いた場合、軽量化等が期待できる。さらに、高分子材料を用いた場合、塗布等による簡便な方法での膜形成が可能となるため、製品の製造コストの軽減が期待できる。そこで、本研究では、有機デバイスを目指した新規材料の開発を行った。

2.内容

本年度は、以下の要領で新規材料の開発を行った。
a 電子機能材料の開発:フェナザシリン含有ポリマーを合成し、さらに、このポリマーを用いた塗布型トランジスタの作製を行った。
b イオン機能性材料の開発:焦点部分にスルホン酸リチウム構造が導入されたオリゴエーテルデンドロンを合成した。また、得られた化合物を用い、リチウムイオン電池への添加効果を調べた。

3.成果

本年度の成果は以下の通りである。
a 電子機能材料に関して:フェナザシリン含有ポリマーはトランジスタ素子の構成材料として有効であった。
b イオン機能性材料に関して:今回合成したリチウム塩は、リチウムイオン二次電池のふくれを防ぐための添加剤として期待できることがわかった。

研究題目 ナノコンポジット技術による生分解性高分子材料の高機能化
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○岡本和明、原田征、飯田浩史、林英樹、中野万敬
(電子情報部)吉村圭二郎
(機械金属部)村田真伸
研究概要

1.目的

押出機を用いたナノフィラーの添加により既存の生分解性樹脂の成形性や難燃性、機械強度などの諸物性を改善し、その利用性を高めることを目的とする。

2.内容

ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレングリコール(PEG)、クレイのコンポジットに混練時にジイソシアネートを加えることで、相溶化剤であるPEGとマトリックス樹脂であるPBSを化学的に結合させ、相溶化剤の溶出を防ぐとともに相溶化剤の効果の増大を試みた。PEGとジイソシアネートを加えるとPEGだけを加えた系より、クレイのX線回折のピークが低角側にシフトすると共に小さくなり、イソシアネートによる効果が見られた。また、PEGを加えずにジイソシアネートだけを加えた場合でも、クレイのモルフォロジーに変化が見られた。さらに、各種抗菌剤を混合したPBSとナノコンポジットのコンポスト汚泥による生分解実験を行った。

3.考察

イソシアネートを加えることで相溶化剤の効果を増大させることができることがわかった。さらに、分離、溶出、材料の軟化の恐れがある低分子やオリゴマーを加えなくても、イソシアネートを加えるだけでナノコンポジット内でのクレイの分散を進めることができることがわかった。

コア技術名 9.製品の長寿命化技術

研究題目 最適設計のための微小部ひずみ測定技術の開発
研究区分 指定
研究者 (材料化学部)○二村道也、林英樹
研究概要

1.目的

製品の破壊は、応力が集中または不均一となる形状急変部や接着部近傍が起点となりやすく、これら箇所のひずみが破壊寿命を決定する重要な因子と考えられる。しかし、従来技術ではこのようなマイクロメータスケールの微小部ひずみは測定困難なことから、顕微ラマン分光を用いた新しいひずみ測定技術の開発を目的とする。

2.内容

顕微ラマン分光を用いた微小部ひずみ測定技術は、繊維など高配向材料のひずみ測定には実績があるが、ラマン不活性な金属や低配向のプラスチックには適用できない。そこで、@ラマン分光によりひずみ測定可能な高配向コーティング材料の開発、Aコーティングを利用したひずみ測定技術の開発、以上2点を課題に様々な工業材料の微小部ひずみ測定を目指した。

3.成果

前年度までに開発した材料は、重合の際、加熱する必要があったことから、コーティングの簡略化を目的に、キャストなどにより非加熱でコーティングできる材料を開発した。新規材料はこれまで同様にアセチレン結合を持ち、アルミ合金板にコーティングして曲げ変形を加えたところ、引張りひずみによりC≡Cピークがシフトしたことから、この材料がひずみセンサに利用可能であることを確認した。また、ラマン分光装置本体から分離して測定するためのファイバープローブヘッドについて検討した。光ファイバを使用した照射・集光系のため伝送損失は避けられないものの、疲労試験機と組み合わせることにより、耐久試験過程にお けるひずみ測定が可能となった。

コア技術名 10.リサイクル・環境対応技術

研究題目 環境を保全する新規吸水・吸油材料の開発
研究区分 重点
研究者 (材料化学部)○中野万敬、朝日真澄、山中基資、山口浩一、奥田英史、村瀬由明、高橋鉱次、木下武彦、石垣友三、福田博行
(電子情報部)吉村圭二郎
研究概要

1.目的

付加価値を高めた独自の環境対応型吸水・吸油材料を開発する。特に、高性能、高機能吸水・吸油材料を利用した(1)超はっ水性材料などの機能材料の開発、(2)含油廃水などの廃液処理、(3)排水中の有価金属などの資源回収を目的とする。

2.内容

(1)基材表面への固定化が可能な含フッ素ゲル化剤と樹脂とを複合化したはっ水膜作製を検討した。
(2)数%の無機塩添加によりエマルジョン溶液を分相し、分離した水相の有機分量について調べた。
(3)開発した吸水ゲルの重金属イオンへの吸着能を明らかにし、熱処理により金属の回収を検討した。

3.成果

(1)含フッ素ゲル化剤/樹脂複合化膜は、水の接触角が140°を超えるような高いはっ水性を示した。
(2)分相により水相のTOCはエマルジョン原液より一桁以上低下した。TNは数十%の低下であった。
(3)吸水ゲルには、金、パラジウム、白金などの貴金属が吸着し、熱処理により金属のみを回収できた。

コア技術名 11.燃料電池技術

研究題目 燃料電池の開発と応用
研究区分 指定
研究者 (電子情報部)○宮田康史、岩間由希
研究概要

1.目的

燃料電池は発電効率が高く、環境負荷が低い次世代の発電装置として期待が高く、内燃機関の代替や分散型電源、可搬型電源として製品化が模索されている。これまで工業研究所で行ってきた燃料電池の開発を進め、中低温域対応の無機系燃料電池用電解質の開発を目標とした。さらに電池材料評価技術の開発を行った。

2.内容

中温域で耐熱性のある電解質を得るために、表面にイオン伝導体を化学結合させた無機化合物の微粒子を作製し、その材料を燃料電池に組み入れ評価した。さらに炭素材料や触媒と開発した電解質を混合して燃料電池電極を作製した。また、電池材料の微粒子分散度を評価するためにミリ波の吸収散乱特性を利用する新しい評価手法を検討した。

3.成果

新規電解質は100℃までの加熱に対しイオン伝導は失われず、それを使った燃料電池は良好な電池特性を示した。中低温域で作動可能な新規燃料電池用電解質の材料開発および製造プロセス開発を検討し、また電極への適用により、全て無機電解質からなる電池を構成することが可能となった。X線や赤外を用いた材料 評価手法を確立すると共にミリ波を用いた新しい材料評価技術を開発した。

コア技術名 12.電子機器の信頼性評価と環境対応技術

研究題目 電子機器の実装技術に関する研究
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
研究者 (電子情報部)○林幸裕、伊藤治彦、吉田和敬、村瀬真、小島雅彦、山田範明
研究概要

1.目的

電子機器・電子部品に用いられるはんだの鉛フリー化に伴って、はんだ接合部の信頼性やめっき面からのウィスカの生成といった、従来の製造プロセスでは起こらなかった問題が発生している。鉛フリー化に関する信頼性評価技術の確立を目的に、BGA(Ball Grid Array)部品のはんだ接合部の濡れ不良及びウィスカの問題に取り組んだ。

2.内容

はんだ濡れ性については、BGAに使用されているはんだボールの表面に形成される酸化膜とはんだ接合不良の相関関係を調べた。また、ウィスカについては、コネクタ圧接部に発生するすずウィスカを調べるため、コネクタのコンタクト端子をすずめっき板に接触させたまま観察できる治具を作製し観察した。その際、嵌合したコネクタに対し引張り試験を行うことにより、接触圧を定量化した。

3.成果

酸化膜厚の増加に伴い、ぬれ時間が増加し、濡れ性が悪化した。しかし、その差はわずかであったことより、はんだ濡れ不良には表面酸化膜以外にも要因があることが示唆された。ウィスカについては、コンタクト端子から発生するウィスカをその場観察により確認できた。コネクタ嵌合時の接触圧を、接触部に荷重をかけながら測定した引張り力と対比することで定量化できた。

コア技術名 13.画像応用技術

研究題目 線状領域撮像方式による画像生成と画像処理
研究区分 指定
研究者 (電子情報部)○黒宮明、渡部謹二
研究概要

1.目的

線状撮像方式の利点を生かして、高分解能・広範囲な画像生成と逐次実時間画像処理を実現する。具体的には、大型の工業製品の表面性状(傷や凹凸)の検査など、対象物の表面を広範かつ高分解能で撮像できる線状方式の撮像装置、画像生成、画像演算を研究開発する。

2.内容

低い位置から広範囲な画像を撮像する装置開発のため、斜め方向から線状撮像した画像を真上方向からみた画像に変換する技法の検討を行った。また、撮像装置から得られる画像を実時間で演算するためのシミュレーション技法の検討を行った。

3.成果

カメラパラメータと収差係数を算出することにより、斜め方向から線状撮像した画像を真上方向からみた画像に変換する手法を確立した。また、実時間画像演算については、記録した線状領域撮像の画像を処理する電子回路の演算と同等の演算をパソコンで実現するシミュレーション技法を確立した。

コア技術名 14.ユビキタス・IT対応技術

研究題目 ナノ技術を応用した表面機能化に関する研究
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
研究者 (電子情報部)○小島雅彦、吉田和敬、村瀬真、濱田幸弘
(材料化学部)山口浩一、村瀬由明、福田博行
研究概要

1.目的

自己組織化単分子膜(SAM:Self­assembled monolayer)および真空紫外(VUV)光照射を利用するナノレベルでの表面改質技術を産業応用に結びつけるため、(1)SAM積層膜による金属の耐食性の改善、(2)VUV光照射による多孔質炭化物の表面改質を目的とする。

2.内容

(1)種々の金属基板上に有機リン酸ジルコニウム積層膜を形成し、塩水噴霧試験により防食性能を調べた。
(2)多孔質炭化物として廃タイヤ熱分解残渣を用いてVUV光照射処理を行い、光照射前後の物性の変化を調べた。

3.成果

(1)純AlおよびCrめっき上へ積層膜を形成したものは耐食性の向上が認められた。
(2)VUV光照射処理により炭化物の親水化ならびに炭化物懸濁液のpHの低下が認められ、炭化物表面に酸性を示す表面官能基(カルボキシル基など)の形成が示唆された。

研究題目 ユビキタスIT対応型デバイスに関連する計測技術、EMC対策技術の開発
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
研究者 (電子情報部)○白川輝幸、山田範明、宮田康史
研究概要

1.目的

ユビキタスITはモバイル、ポータブル、高周波利用という特徴がある。これらの技術の中小企業における対応は十分とは言えないのが現状である。本研究の目的は、ユビキタスITに対応した技術開発を支援するために、関連の計測技術を確立するとともに、EMC対策技術を開発することにある。

2.内容

MC対策技術を確立するために、実験に使用する基板の設計・作成を行い、基板のMixed­mode S パラメータを測定し信号の伝送特性を調べた。パターンの近傍電磁界の測定を行って、開発した近傍電磁界測定技術を検証した。また、電磁波を用いた計測手法の検討に着手し、可視光や赤外光で計測が困難な微粒子材料の分散度評価について検討した。

3.成果

伝送路のMixed­modeSパラメータは、線間距離の変化によって大きく影響を受けることがわかった。また、開発した近傍電磁界の測定技術の適用範囲を見出した。電磁波を用いた計測手法については、微粒子材料分散度の評価手法を開発した。

コア技術名 15.熱・音響・振動計測による材料・製品の評価技術

研究題目 熱・温度に関する材料物性評価技術、熱設計技術の確立
研究区分 指定
研究者 (電子情報部)○高橋文明、小田究、梶田欣、野呂重樹
研究概要

1.目的

最近の電子機器では、小型化あるいは高性能化に伴う発熱量の増加が深刻な問題になっている。これに対して、シミュレーション技術を用いた熱対策技術、いわゆる熱設計を製品開発に活用する事例が増えている。本研究では、熱設計技術を確立するため以下の内容に取り組んだ。

2.内容

レーザフラッシュ法を電子部品に用いられる多層材料に適用する際に問題となるレーザ光強度の不均一性を改善するため、新たに拡散フィルターを作製した。また、電子部品の発熱量を把握するために発熱体の放射率を変化させたときに生じる温度差から発熱量を簡易的に推定する手法を考案し、電子部品を模擬したヒーターによる実証試験を行った。

3.成果

拡散フィルターを用いることによって、レーザ光強度の不均一性を改善できることが確認できた。また、シミュレーションを行う際にこれまで不明瞭のまま取り扱ってきた電子部品の発熱量を簡易的に推定できることが明らかになった。

研究題目 電子機器の熱問題を解決するためのシミュレーション技術の開発
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
研究者 (電子情報部)○梶田欣、高橋文明、小田究、野呂重樹
研究概要

1.目的

電子機器開発における熱設計の位置付けは年々重要度を増しており、中でも自己発熱する電子部品の温度上昇を正確に反映させることが大変重要となってきている。本研究では、汎用熱流体解析ソフトを用いて効率的に熱設計を行う手法を確立するため以下の内容に取り組んだ。

2.内容

解析モデルの簡略化の検討を進めるにあたり、基板を内装した筐体に対して、汎用熱流体解析ソフトを用いて、筐体ならびに基板の各部を可能な限り忠実に再現した「詳細モデル」による解析を行うとともに、筐体の一部に開けた窓を通してサーモグラフィーによって温度測定を行い、両者を比較した。

3.成果

窓材としてラップを用いれば、筐体内の基板温度を窓の影響なく測定できること、また、「詳細モデル」を用いれば自己発熱する電子部品ならびに基板の温度を忠実にシミュレーションできることが明らかになった。

研究題目 ランダム振動試験の条件設定に関する研究
研究区分 指定
研究者 (電子情報部)○井谷久博、吉村圭二郎
研究概要

1.目的

包装貨物の輸送過程の耐振性を評価する試験として、当所では正弦波振動試験を行ってきた。一方、JIS規格では、ランダム振動試験の方が実際の輸送環境をより的確に再現する方法として望ましいとうたわれている。しかしながら、試験条件について規定されておらず、大手企業で実際に行われている試験条件に関する詳細は公表されていないのが現状である。当所では,正弦波振動試験との関連づけが困難なことや、ランダム振動試験の条件の決定に関しノウハウをもっていないため実施していない。本研究では、信頼性試験において正弦波振動試験からランダム振動試験へ移行することを目的とし、実環境における振動解析と試験条件の決定方式に関する研究を行う。

2.内容

学会・展示会などでのランダム振動試験の試験条件の決定方法や振動測定方法などの技術調査および、トラック荷台の振動加速度データの測定・解析を行った。

3.成果

ランダム振動試験の決定方法については、計測データからの一様でない部分の区分、輸送シナリオの作成、区分け比率の決定、PSDの決定と加速度レベルの頻度解析から時間短縮を行う方法と蓄積疲労を試験評価指標に用いる方法などが提案されているが、さらなる調査が必要であることが明らかになった。

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