研究課題評価

平成20年度 第2回研究課題評価

平成20年度 第2回研究課題事前評価および中間評価について

平成21年1月29日(木)に、平成20年度第2回研究課題評価委員会を開催し、平成21年度から実施する研究の事前評価、平成18年度より実施している研究の中間評価を行いましたので、その結果を公表します。

1 評価の目的

外部の学識者等6名(別添「名簿」のとおり。)から成る研究課題評価委員会において、当所の研究計画および研究成果を客観的に評価し、効果的・効率的な研究の実施、予算、人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに研究業務の透明性を高めることを目的とする。

2 委員会開催日時

平成21年1月29日(木)13時00分~17時00分

3 内容

平成21年度から実施する研究のうち、コア技術に係る主要研究5件について下記5項目に関する事前評価を受けた。

  1. 当所の使命との適合性
  2. 研究目的の妥当性
  3. 研究内容の妥当性
  4. 研究実施体制の妥当性
  5. 成果の波及効果

平成18年度より実施している主要研究6件について下記4項目に関する中間評価を受けた。

  1. 進捗状況
  2. 当初計画の妥当性
  3. 成果の見通し、問題点の明確化
  4. 計画の見直しの必要性

4 評価結果

(1)事前評価

評価指標 A B C D
工業研究所の内部評価 4件 1件 0件 0件
評価委員会の評価 2件 3件 0件 0件

A:計画どおり実施。
B:一部修正して実施。
C:計画の変更を要する。
D:計画を保留し内容を見直す。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。)

(2)中間評価

評価指標 A B C D
工業研究所の内部評価 2件 3件 1件 0件
評価委員会の評価 3件 2件 1件 0件

A:今後十分な研究成果が期待できる。
B:今後一定の研究成果が期待できる。
C:今後の見通しに問題があり、見直しが必要である。
D:研究の終了を検討すべきである。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。)

平成20年度 名古屋市工業研究所研究課題評価委員会 出席委員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
沖 猛雄 名古屋大学 名誉教授
小野木克明 名古屋大学 大学院工学研究科長 工学部長
木本 博 中部大学 研究支援センター 教授
末松良一 豊田工業高等専門学校 校長
田口義高 中京油脂株式会社 取締役開発センター長
竹中 修 科学技術交流財団 知的クラスター創成事業本部 事業総括

平成20年度 第2回研究課題評価 事前評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
無機系排水からの有価金属回収 産業廃棄物等に含まれる重金属の処理方法の開発が望まれている。泡沫分離法は、界面活性剤の水溶液に空気を吹き込む操作によって目的物の濃縮分離を行う低環境負荷な分離法であり、簡便でランニングコストが低いという特徴がある。本研究では、新規開発した泡沫分離法における各種の影響因子を体系的に明らかにし、スケールアップなどの実用化を視野にいれた設計指針の提示を目的とする。
光触媒材料の開発および製品への応用 光触媒関連技術は大規模な設備が不要な省エネルギー技術であり、中小企業にとっても開発意欲が強い分野である。当所はチタニア架橋粘土光触媒に関するシーズを有し、現在までに室内VOC対策用光触媒コーティング液を開発して実用化に至っている。本研究では室内VOC対策に焦点を絞り、さらに高性能な光触媒材料の開発を目指す。
環境調和型材料の分析評価技術における課題解決および新規分析法の開発 製品中に含まれる有害金属の分析の需要が高まり、その分析技術の確立が重要になってきている。しかし、現状の金属の分析技術では、標準物質の入手が困難であったり、試料の分解法が確立されていないなど課題も多い。そこで、本研究では環境調和型材料の分析における課題を解決するとともに、新規分析技術の確立を目的とする。
X線CT3次元測定によるバイオプラスチック製品の高品位化 バイオプラスチックと既存樹脂のブレンドが実用化されはじめている。しかし、これらのブレンド樹脂の成形加工特性は従来の樹脂とは異なり、成形加工に新たなノウハウが必要となる。バイオプラスチックのブレンドやアロイを開発し、実際に近い成形体での物性向上を目指すとともに、CAD上でのデータと成形体とを現物融合化した「デジタルものづくり」の方法を確立することが必要である。これらを総合し、高精度、高強度のバイオプラスチック製品製造への支援体制を確立することを目的とする。
エネルギー吸収部材の設計手法の確立 自動車産業では、車体軽量化と乗員保護という相反した性能を満たすために、樹脂やウレタンフォーム等の軽量なエネルギー吸収部材の使用量が急増している。しかしながら、中小企業の開発現場では、エネルギー吸収部材の設計・開発手法は試作による繰り返し評価が主流であり、効率的な設計・開発が行われているとは言い難い。本研究では、エネルギー吸収部材の基礎的な評価方法を確立し、CAEによるシミュレーション技術を活用した効率的な設計手法の確立を目指す。

平成20年度 第2回研究課題評価 中間評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
新しい亜鉛合金めっき技術の開発 本研究では、めっき可能な亜鉛合金の種類を検討するとともに、めっき浴組成、電解条件の最適化を図り、亜鉛合金めっき皮膜の析出結晶の形状を制御することにより耐食性向上を図り、亜鉛めっきの後処理を不要とする技術を開発することを目指す。
機能性有機・無機ハイブリッド皮膜によるコーティング技術の開発 本研究では化学溶液法を用いて、シリカ等の無機成分と樹脂や有機シラン化合物等の有機成分の組成や反応性を制御してハイブリッド化することで、セラミックス、金属および木材等の材料表面に、親水・撥水性、耐擦傷性、防汚や耐食性などの機能を発現させ、しかもサブミクロンの薄膜から数十ミクロンの厚膜まで対応可能な有機・無機ハイブリッド皮膜の作製に関する技術開発を行う。材料表面のコーティングにおける課題は、皮膜の基板材料上における密着性の向上や剥離の防止であるが、皮膜の前駆体組成を最適化することにより課題を解決し、機能の向上化を目指す。
環境を保全する新規吸水・吸油材料の開発 当所がこれまでコア技術として培ってきた環境材料技術とナノ材料技術により、付加価値を高めた独自の環境対応型吸水・吸油材料を開発してその用途をさらに拡大し、環境に配慮した製品および製造技術の開発や生産活動に課題を抱える中小企業を支援し、企業の研究・技術開発能力を強化することを目的とする。特に、高性能、高機能吸水・吸油材料を開発し、超はっ水性材料などの機能材料の開発、含油廃水などの廃液処理、排水中の有価金属などの資源回収を目標とする。
ナノ技術を応用した表面機能強化に関する研究 はっ水性部材の需要は、自動車、建築、被服、工学部品など広範囲にわたり、将来巨大な潜在的市場が待ち受けていると言われている。本研究は、複雑形状部材へ有機シラン系の自己組織化単分子膜(SAM:Self­assembled Monolayer)をコーティングすることによってはっ水性機能を付与する技術を開発する。特殊な高額な機器を必要としない簡便な方法であるので、中小企業にはっ水性部材市場に参入する可能性を開くものである。
セラミックスの耐熱部品および耐摩耗部品への応用に関する研究 耐熱性に優れるだけではなく容易に機械加工できるセラミックス(いわゆるマシナブルセラミックス)の製造技術を開発する。従来法よりも環境負荷を大幅に削減して低コストで製造する技術を確立する。マシナブルセラミックスはたとえば「熱処理・鋳造設備向けのセラミックス部材」としての利用が期待できる。
燃料電池の開発と応用 本技術開発では、燃料電池の実用化、応用技術として電気製品電源への搭載、特にニーズが増加すると思われる小型電気機器への応用を可能とすることを目標とする。電池を実用化する際には電池システムや電池の搭載に適した電気機器の開発が不可欠となる。そこで材料開発から電池特性評価までが可能である当所の技術を活かし、実用化技術、電池評価技術の開発を行う。

平成20年度 第2回研究課題事前評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
無機系排水からの有価金属回収 15.3 B 17.4 B ・環境負荷を与えない界面活性剤を研究対象として使用して下さい。
・用途を明確にして下さい。
・界面活性剤が専門の研究員を加えた方がより効果的である。
・界面活性剤との親和性メカニズムの解明が重要である。
回収する金属を明確にし、そのために必要となる界面活性剤の研究を行う。
光触媒材料の開発および製品への応用 20.3 A 23.7 A ・大変興味深く、広く外部に発表する事が大切である。
・用途開発を明確にして商品化を目指して欲しい。
・酸化チタン以外の可視光対応光触媒を開発している機関との共同研究も検討し、早く実用化して欲しい。
当所の有する光触媒シーズ技術の広報活動に努め、用途開発を明確にした商品化をめざして研究を行う。
環境調和型材料の分析評価技術における課題解決および新規分析法の開発 21.2 A 21.3 A ・大切なテーマです。成果を活用し、さらなる展開を期待します。
・JIS規格に反映される方法を確立してほしい。
JIS規格に反映できるような分析技術の研究開発を行う。
X線CT3次元測定によるバイオプラスチック製品の高品位化 20.8 A 19.6 B ・バイオプラスチックは将来大きな市場が見込まれるので、成果の波及効果は大きい。
・ブレンドによるデメリットとその対応を明確にして欲しい。
・材料の創製、加工、リサイクルの視点から、LCA(Life Cycle Assesment)の考えを取り入れ、研究の意義をとらえることが必要である。
バイオプラスチック製品の高品位化について、リサイクルの視点を入れながら、研究を進める。
エネルギー吸収部材の設計手法の確立 20.2 A 18.3 B ・課題としては面白いが、対象を限定することが必要である。
・今までに市工研で蓄積されたCAEデータやシミュレーション技術をどうレベルアップしていくかを明確にして欲しい。
・実用化までの道筋を明確にして、今回のテーマの位置づけを明らかにすること。
・他の研究機関の研究課題も調べること。
・材料の専門家との協力も必要である。
樹脂、発泡材の材質や形状を絞り込んで、エネルギー吸収性能との関係を明確にする。また、樹脂材料が専門の研究員を加えて研究を進める。

・評点は、1.当所の使命との適合性、2.研究目的の妥当性、3.研究内容の妥当性、4.研究実施体制の妥当性、5.成果の波及効果の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:計画通り実施可。 B:一部修正して実施可。 C:計画の変更を要する。 D:計画を保留し、内容を見直す。

平成20年度 第2回研究課題中間評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
新しい亜鉛合金めっき技術の開発 12.3 B 15.0 B ・用途を明確にして、それに必要な目標に向けて何をすべきかはっきりさせ、その対応をすること。
・研究成果を期待している。
さらなる高耐食性を目標に改善を図るとともに、皮膜硬度などの機械的特性評価を行って、自動車部品などへの実用化を目指す。
機能性有機・無機ハイブリッド皮膜によるコーティング技術の開発 16.0 A 18.7 A ・非常にレベルの高い研究である。これまでの成果を活用し、さらなる発展を期待している。
・「撥水性」という機能の実用化について、もう少し研究して欲しい。
撥水性がより向上した皮膜を開発するため、有機シランの誘導体合成を再度見直して、防汚製品等への実用化を目指す。
環境を保全する新規吸水・吸油材料の開発 14.7 B 13.0 B ・サブテーマが個別に進行している。相乗効果が出るような体制にすることが必要である。
・あと1年で成果に繋げていくために、テーマの選択と集中が必要である。
・研究成果の展開先やビジョンを明確にすることが必要である。
サブテーマの数を3つから2つにし、テーマ間の連携を密にすることにより、中小企業での実用化を視野に入れた研究を実施する。
ナノ技術を応用した表面機能強化に関する研究 11.2 C 11.0 C ・2つのテーマのつながりがない。
・腐食の専門家の意見を聞いて進めて下さい。
・SAMのターゲットの見直しが必要であり、長期耐久性を求めるのは無理である。
・実験結果を裏づけるための考察が必要である。
研究目的をSAMによる金属表面の機能化とするが、クロメート代替への利用は見直し、新たな用途の検討を行う。
セラミックスの耐熱部品および耐摩耗部品への応用に関する研究 12.7 B 16.9 A ・研究の進捗は順調であり、興味深く発展性がある。多種類の成形形状を示せるとなお良い。
・ターゲットの明確化とそれに対する基礎データの蓄積が必要である。
・共同研究ではあるが、主導権を持って進めている。
ユーザーを見出す努力を続け、ターゲットの明確化を急ぐ。ターゲットを踏まえた複数形状のサンプルについて評価する。
燃料電池の開発と応用 16.3 A 17.3 A ・研究目標は明確で、多くの知見も得られており、順調に進んでいる。
・市工研の特徴を活かした研究である。
・多くの因子や要素が関係しているが、確実に研究を展開している。
・さらに、研究体制(人員)を強化して下さい。
今後とも大学や企業との連携を図りながら電池の新規材料開発や評価技術開発を推進するとともに、特許化や応用技術の普及も進めていく。

・評点は、1.進捗状況、2.当初計画の妥当性、3.成果の見通し、問題点の明確化、4.計画の見直しの必要性の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:今後十分な研究成果が期待できる。 B:今後一定の研究成果が期待できる。 C:今後の見通しに問題があり、見直しが必要である。 D:研究の終了を検討すべきである。