研究課題評価

平成20年度 第1回研究課題評価

平成20年度 第1回研究課題事後評価について

平成20年7月14日(月)に、平成20年度第1回研究課題評価委員会を開催し、平成19年度で終了した研究の事後評価を行いましたので、その結果を公表します。

1 評価の目的

外部の学識者等7名(別添「名簿」のとおり。)から成る研究課題評価委員会において、当所の研究計画および研究成果を客観的に評価し、効果的・効率的な研究の実施、予算、人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに研究業務の透明性を高めることを目的とする。

2 委員会開催日時

平成20年7月14日(月)13時00分~16時30分

3 内容

前年度で終了したコア技術に係る研究9件について下記3項目に関する事後評価を受けた。

  1. 目標の達成度
  2. 達成された成果の意義
  3. 技術としての発展性

4 評価結果

(1)事後評価

評価指標 A B C
工業研究所の内部評価 3件 5件 1件
評価委員会の評価 3件 6件 0件

A:十分な研究成果が得られている。
B:一定の研究成果が得られている。
C:十分な研究成果が得られていない。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。)

平成20年度 名古屋市工業研究所研究課題評価委員会 出席委員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
沖 猛雄 名古屋大学 名誉教授
小野木克明 名古屋大学 大学院工学研究科長 工学部長
木本 博 中部大学 研究支援センター コーディネータ
末松良一 豊田工業高等専門学校 校長
飯田昭夫 いいだ特許事務所 所長
田口義高 中京油脂株式会社 取締役開発センター長
萩原義昭 萩原電気株式会社 代表取締役社長
竹中 修 科学技術交流財団 第1期知的クラスター創成事業本部 事業総括

平成20年度 第1回研究課題評価 事後評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
バイオマス由来の環境適応材料の開発と応用 ポリ乳酸等のバイオプラスチックは、生分解性や植物由来であることなどから、環境にやさしい材料として今後の普及が期待されている。しかしながら、製品化においては、対象となる製品、材料の組成、成形条件、物性の経時変化等が明確ではないため、普及が進んでいない。そこで、(1)物性や成形性が優れたコンパウンドの開発、(2)適切な金型の設計、(3)成形加工技術の確立について検討を進め、成果を企業に普及する。
機能性添加剤を目指した材料開発 蛍光や酸化防止機能を有するジフェニルアミンをベースとする新規化合物を合成し、ポリ乳酸等の生分解性ポリマーや汎用プラスチックへ添加した成形品を作製するとともに、化合物及び成形品の特性や物性について評価する。また、添加剤の環境への流出を軽減するため、添加剤とポリマーとの化学結合の生成による安定化を図る。
超臨界流体の利用によるバイオプラスチックのリサイクル技術の開発 代表的なバイオプラスチックであるポリ乳酸は、今後使用量が増加することが見込まれるが、それに伴って使用済み成形品の廃棄や、原料のトウモロコシ等の供給に問題が生じてくることが予想される。この研究では、ポリ乳酸あるいはポリ乳酸と他種ポリマーとのブレンドポリマーを対象にして、超臨界二酸化炭素を反応媒体に用いて、使用済みポリ乳酸をその製造原料に分解してリサイクルする技術の開発に取り組む。
金属強化マグネシウム合金複合材料の創製 マグネシウムを他の金属で強化することによって、純マグネシウムの持つ高い制振性とリサイクル性を保ちながらも、従来なしえなかった強度・剛性を向上させた新しいマグネシウム材料を開発し、その特性を生かした機械要素部品への展開を図る。
加工機械等の性能診断技術の確立 加工機械は、部品や工具の破損・磨耗等により故障や性能低下を招き、部品や工具の交換時期の適・不適が製品の加工精度、コスト等に波及するため、機械の予知保全が課題である。加工機械等の故障や工具寿命を診断するために、加工性能等と密接に関連する異常な徴候として機械が発生する音やAE等をインプロセスで評価することに適した測定法を検討する。また、並行して、測定信号処理・診断のためのソフトの開発を行う。
移動型画像計測システム 可動式のカメラを使った高精度かつ高速度な画像入力技術と画像処理の小型化、照明方法等の周辺技術を確立し、複数台のカメラによる三角測量の技術を応用した計測システムを開発する。さらに一般的な静止画像や動画像のみならず、連続的なパノラマ画像や、カメラ固定で対象物を回転して得られる360度の画像等に、計測結果である有益な位置情報を加え、高精度な三次元画像計測技術を研究する。
金属材料の破損・不良調査事例のデータベース化 中小企業からの金属材料の破損・不良調査依頼に対して、今後もより的確・迅速に応えられる体制を維持あるいは強化していくために、過去の調査事例を有効に活用できるデータベースの構築をめざす。そのために材料や技術の進歩への対応を考慮して、調査事例の整理と内容の洗い出しを行い、データベース化に必要なデータ項目、入力の形式や方法等を検討して最適なデータ入力フォームを作成し、データベース化を進める。
熱・温度に関する材料物性評価、熱設計技術 電子機器の小型化・高性能化に伴って生じる発熱への対策が重要性を増している。そこで、使用時の製品の温度予測を行うため、シミュレーションを用いた熱設計技術を確立する。そして、コスト・信頼性で有利な自然対流を利用した空冷による効果的な放熱手法の開発を行う。また、電子機器の小型化・高密度化の必要性から、薄膜等の電子材料の熱物性評価法を開発し、その高精度化を図る。
製品の長寿命化技術
―最適設計のための微小部位応力測定―
製品の長寿命化は、形状変更等により応力集中やき裂進展速度を低下させることによって実現可能である。しかし、従来の方法では、破壊起点やき裂先端等微小部に発生する応力を詳細に測定できず、構造や材料の面で過剰設計となりやすい。そこで、ラマン分光法を用いた新しい微小部応力測定技術を開発し、製品の最適設計に役立てることにより、中小企業の高いモノづくり技術を生かした長寿命製品の開発を支援する。

平成20年度 第1回研究課題事後評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
バイオマス由来の環境適応材料の開発と応用 8.3 A 8.0 A ・工業的に利用される部品を対象として強度や挫屈性からの検討が必要である。
・用途展開を進め、更に優れた特長を付加してほしい。
・研究環境も整い、優れた成果をあげている。今後の発展を期待する。
業界ニーズを調査する中で対象とする部品とそれに必要な特徴を検討し研究を展開する。
バイオプラのアロイ化および成形加工についてさらに研究を行う。
機能性添加剤を目指した材料開発 7.7 B 5.3 B ・予期せぬ成果に基づいた積極的な研究目標の修正があっても良かったのではないか。
・長期エージングによる変色傾向の検討がほしい。
・評価手法を確定して成果を整理することで、今後残された研究課題が明確になり、発展性が見えてくると思う。
・電子材料での応用を期待したい
材料の評価方法の検討を行うとともに、新規材料の開発を行う。
超臨界流体の利用によるバイオプラスチックのリサイクル技術の開発 5.7 B 4.7 B ・当初の目的に対して、実験結果及び考察が不十分である。
・リサイクル技術に関しては、残念ながら成果が見えてない。ただ、現象を明確にしたことは評価できる。
・超臨界装置の特長を生かした有効利用を期待する。
・作製した乳酸メチルの活用法まで検討してほしい。
ポリ乳酸の有効なリサイクル法について引き続き検討するとともに、企業における超臨界流体利用技術の応用を図る。
金属強化マグネシウム合金複合材料の創製 4.7 C 5.3 B ・3年間の研究にしては実験データが少なく、進捗が遅い。
・目的を大きく設定し、継続を望む。
・研究成果をさらに発展させて、マグネシウム合金の用途拡大につなげてほしい。
・テーマとして中断するのであれば当初の設定目標が甘かったのではないか。
・何か応用することを考えてほしい。
今後、この成果を中小企業への波及効果が期待できる応用研究(板材の成形に関する研究)の中で活用していきたい。
加工機械等の性能診断技術の確立 5.5 B 6.0 B ・従来の専門家が行っていた手法をシステム化したことには意義がある。
・提案した手法を一般化するためには、被切削材や運転条件の違い等が摩耗量の経時変化に及ぼす影響等を明らかにすることが必要である。
・条件を異にする実験データを増やして標準化してみることにより、一般企業の判断の一助とできるようにしてもらいたい。
・音と振動でモニターできることを証明したことは評価する。これを特殊解から一般解にもっていくことを期待する。予防保全に結びつく。
・切削の初期と最後のみの特徴を抽出しているのは興味深い。
・穴アスペクト比の影響量も調べてほしい。
・企業のニーズからの事例を蓄積すること。
・切削のメカニズムや本質について切削の専門家との議論を期待する。
指摘の通りに、一般化を今後の目標として捉えていく。
標準化するためには外的因子の少ないデータの取得や的確なデータ抽出などの課題が残っており、今後、第2期のコア技術の研究において、その課題解決を図っていく。
移動型画像計測システム 8.0 A 8.5 A ・計測精度とスピードの向上をさらに進めて欲しい。
・費用対効果の高い現実的な計測・検査システムである。
・応用分野を広くカバーして特許化すること。
・計測分野の国際学会において発表するよう希望する。
・製造業をはじめ他の分野への技術転用を期待する。
ご指摘の内容を取り入れ今後ともさらなる実用化に努める。
特許化や研究発表も積極的に行い、製造業をはじめとする多くの分野への応用を試みたい。
金属材料の破損・不良調査事例のデータベース化 6.6 B 7.0 B ・公設研究機関で使用できるデータベースシステムを目指すべきである。
・目標は達成できたと思うのでデータベースの活用が簡単にできるように望む。県内のデータベースの標準化に向けてリードされることを期待する。
・広く中小企業に活用されるためには、再発防止のための要因解析などデータベースの中身を充実すること。
・データベースの構築はほぼ完了している。今後は、技術相談の場でこれを活用することを考えてほしい。とくに要因分析から対策に至るアドバイスは重要である。
・他の機関と情報交換をして、事例を充実すること(世界中、至る所に事例あり)。
今後も有用な事例はデータ入力を行い、件数・中身を充実させて企業への技術支援に活用する。
また、データのさらなる充実を図るため他機関との連携を検討する。
熱・温度に関する材料物性評価、熱設計技術・熱物性評価技術、放熱促進技術の開発 8.1 A 8.0 A ・相談対象の範囲が広く、研究課題の設定が難しい中、目標・計画をある程度達成しており、発展性の高い優れた研究と考えられる。
・重要なテーマなので、適用範囲の明確化、設計段階での活用などにより、本技術の優位性を事例で証明し、今後とも精進していただきたい。
・シミュレーション技術に関する成果をノウハウとするか特許とするか研究所としての対応を決める必要がある。
・薄膜、多層膜のニーズも多いので、依頼内容を適切に分類し、データベース化することが必要である。
本研究で提案したシミュレーション技術の適用範囲を明確化するとともに、材料物性評価技術のデータベース化を行う。
また、特許出願も視野に入れながら、製品開発の初期段階における熱設計技術の活用を目指して今後の研究に取り組む。
製品の長寿命化技術
(最適設計のための微小部ひずみ測定技術の開発)
6.3 B 6.3 B ・オリジナリティが何であるか明確にして優位性を証明すること。
・コーティング材料の開発が要点であるので、その膜厚、物性などセンサとして充分に再現性のあるものに仕上げてほしい。
・コーティングが測定結果に及ぼす影響について検討しておくことが必要である。
・条件を追加した実験を多く実行することにより、実用性も明確になる。
測定精度や再現性の向上など、実用化を目的に研究を継続する。
実験時間を十分に確保し、センサとして必要な基礎データを蓄積する。

・評点は、1.研究の達成度、2.達成された成果の意義、3.技術としての発展性の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:十分な研究成果が得られている。 B:一定の研究成果が得られている。 C:十分な研究成果が得られなかった。