事業概要
(1)事業の目的
近年、エアコンや冷蔵庫など一般機器等にとって低騒音であることは一つの商品価値とみなされる。また、自動車業界では、コス ト削減と軽量化をめざしつつ、さらなる車内低騒音化が要求されている。鉄道業界においても、ヨーロッパで環境問題から鉄道が再評価され高速鉄道網の議論が 盛んになるなど、より一層の高速化とそれに伴う列車内外への騒音対策が必要となっている。このような状況のなかで、各部材・部品を製造する中小企業もま た、騒音にも配慮した高性能、高付加価値の製品設計・開発を行うことが要求されており、これらに対応できる技術力を養うことが今後の競争力強化につながる と思われる。
機器等の低騒音化手法としては、これまでは音圧レベルによる評価から騒音低減対策をとる事が多く行われてきた。当然、音圧レベルの低減は低騒音化に最も有 効な手法であり、今後も測定設備の充実や技術向上を図る必要がある。しかし、遮音性向上などの音圧レベル低減を目標とした通常の防音対策ではコスト増や重 量増を招き易く、また、特に対策が進んできた現況ではこれ以上の低騒音化が難しいことも多い。一方、最近は音質評価技術による騒音対策が注目されている。 音質評価技術では音の音質に着目し評価を行う。従来手法による対策が困難な場合でも、騒音をより気にならない音、好ましい音へと改善することができれば、 騒音を和らげ、対策コストも抑えることができるため、音質評価の面から音を評価し改善することも低騒音化に非常に有効な手段となる。
昨今の国際化のなか、多くの中小企業にとっては厳しい環境であるが、これまでの音圧レベルによる評価手法に加えて新しい音質評価技術を導入し、製品開発能 力を強化することは今後の発展に有用と思われる。しかし一連の評価を行える機器は高価で、一中小企業が購入し研究開発を行うことは容易ではない。また、こ れまでとは異なる評価技術が必要で、予備知識や経験に基づいたノウハウなども必要とされる。
本事業では、所要機器を設置して設備の拡充強化を図るとともに、輸送用機械・機器や工作機械など、名古屋市および周辺地域に多く存在している機械関連の中 小企業を対象に、従来の音圧レベルを低減する手法に加えて音質を考慮した対策手法について指導・育成を行い、中小企業の技術水準向上および発展に寄与する ことを目的とする。
(2)具体的な実施内容・成果
音源探査および心理音響評価システムを購入し設置した。
定常音については、音響インテンシティを各点で測定しマッピングすることにより音源探査を行えるようになった。非定常音については、マイクロホンアレイを 用いた近距離音響ホログラフィ解析から多点同時計測された音響データの可視化が可能となり、場合に応じて使い分けることで、音源の位置や特徴を詳細に調査 が可能となった。また、別に音響データを取得してラウドネスなどの客観的音質評価も行え、ヘッドホン再生による主観的音質評価と合わせて、どの音が好まれ るか、どのような音質を目指すか等、音質を考慮した騒音への対策が検討できるようになった。
導入設備を利用し、受託研究をとおして音質評価を含めた低騒音化や音の評価についての技術指導を行った。
予想実施効果
本事業で導入した機器の利用により、名古屋市および周辺地域の機械関連中小企業にとって、製品低騒音化のコスト増・重量増の軽減や、これまでの手法では充 分な対応が困難であった騒音への対策の検討が可能となる。また、音質を考慮した騒音対策技術等に関する受託研究や技術指導の実施を通し、低価格で低騒音・ 高品質な製品の開発が期待され、当地域における機械関連中小企業の今後の競争力強化につながると予想される。
導入設備概要
設置場所:【名古屋市工業研究所】
客観的評価量による音質評価、ヘッドホン試聴による主観的音質評価、音響インテンシティの測定による音源探査、マイクロホンアレイによる非定常音響データ取得と可視化が可能。
お問い合わせ
団体名:名古屋市工業研究所(ナゴヤシコウギョウケンキュウショ)
住 所:456-0058
名古屋市熱田区六番三丁目4番41号
担当部署:支援総括課(シエンソウカツカ)
電話番号:052-661-3161
FAX:052-654-6788
Email:kikaku@nmiri.city.nagoya.jp
URL:http://www.nmiri.city.nagoya.jp/