重点事業および指定研究に関する意見聴取について
令和4年1月21日(金)に、令和3年度機関運営会議(研究課題)を開催し、令和3年度で終了する重点事業の事後報告(1件)、令和4年度から実施する重点事業の事前説明(1件)、令和4年度から実施する指定研究の事前説明(2件)を行いました。 |
1 目的
機関運営会議は、外部の学識者等6名から構成されており、当所の研究計画や研究成果等について客観的な立場からご意見をいただき、効果的・効率的な研究の実施や予算・人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに、研究業務の透明性を高めることを目的としています。
2 開催日時
令和4年1月21日(金) 9時00分~12時00分
3 会議内容と当所の対応
機関運営会議においては、主担当者のプレゼンテーションに対して有意義なご意見を頂きました。
以下に、構成員からのコメントのまとめおよび当所としての対応方針を示します。
1) 重点事業「製品トラブルについての原因調査の効率化(R2~R3)」(事後報告)
機関運営会議におけるコメントまとめ
- 電子顕微鏡は中小企業が独自に導入するには高額な装置であり、公設試への設置は地場産業への寄与が十分見込める。この装置で何ができるのか具体例を示しつつ、従来利用のなかった企業へも宣伝する取り組みを一層強化してほしい。
- 今回の研究を通して得られた装置操作のスキル向上が大きな成果である。今後、様々な試料に対応した測定技術に精通するとともに、測定結果を的確に評価できるエキスパートの養成にも注力してほしい。
- EBSD(結晶方位解析などできる装置)は有効活用が期待されるが、正しい情報を提供するためには、どの面の方位なのか、信頼値をどこに設定しているかなど注意することが必要である。またマルテンサイト変態で現れるbct相を含め、各相のデータベースを揃えることを期待する。
当所としての今後の対応
- 電子顕微鏡について、本事業から得られた研究結果および分析・解析技術をはじめとした具体例を示し、メールマガジン、月刊名工研、講演会、研究発表などを通じて対外的に速やかに情報発信していきます。
- 幅広い材料に対して電子顕微鏡による的確な測定・評価が可能となるよう技術向上を目指すとともに、情報共有などにより研究員の育成に努めます。
- EBSDによる結晶方位解析の有効性については、利用者に対し正確な情報を提供するため、今後も知識・経験を深め、より高度な支援を可能とするよう研究していきます。
2) 重点事業「防音材の特性評価技術の高度化 (R4~R5)」(事前説明)
機関運営会議におけるコメントまとめ
- 音響管法と残響室法が同時に導入されるメリットを最大限に利用してほしい。そのためにも、研究課題を通して両測定手法の特徴を充分に把握し、製品特性の改善につなげることを期待する。
- 高度化される評価項目を明確にするなど、自動車産業以外にも様々な業界に対してアピールし、技術支援の強化が図られることを期待する。
- 気温、湿度、気圧などの環境を配慮して周波数特性を測定し、広範囲に対応できるデータベース構築を目指してほしい。
当所としての今後の対応
- 2種類の測定方法の特性を明らかにし、それぞれの長所を活かした技術支援を目指します。
- 吸音率・音響透過損失測定システムを活用し、自動車産業をはじめとする中小企業の防音性能を有する製品開発に寄与するよう努めます。
- 気温など測定環境による結果への影響を検討し、幅広い測定事例の蓄積に努めます。
3) 指定研究「ロボットアームを活用した外観検査システムの撮影環境構築手法 (R4)」(事前説明)
機関運営会議におけるコメントまとめ
- 多種多様な外観検査の自動化に対する要望に応えられるよう、知見を積み上げてほしい。
- 画像処理とアーム動作制御との連携方法、および、目指すAI処理のレベルなど、この研究の独自性と目標とをもう少し具体的かつ明確にして成果につなげてほしい。
- 広報および研修会の実施により、積極的なノウハウの提供を期待する。
当所としての今後の対応
- 多種多様な外観検査に対応する撮影環境の構築を目指して研究を進めます。
- 画像処理によるアーム位置制御の様々な手法および結果として得られるカメラや撮影対象に関する位置情報の精度がディープラーニングを利用した検査に与える影響を検証します。
- 得られた知見を積極的に広報し、研修会などを通じて企業支援につなげていきます。
4) 指定研究「CFRP積層板に生じた疲労損傷の進展抑制に関する研究 (R4)」(事前説明)
機関運営会議におけるコメントまとめ
- 公設試の研究テーマとしてCFRPの材料評価は意義がある。信頼性の高い手法の確立と成果の公開を期待する。
- CFRPなどに代表される積層材料は、外表面に到達しない欠陥が内部で成長することも予想され、その場合、表面探傷である蛍光浸透探傷検査法では欠陥が認識できないことが考えられる。表面と内部の損傷の因果関係を検討してほしい。
- 今回の研究は穴開きのCFRPの損傷であったが穴径は小さく曲率半径の大きな穴(例えば窓枠)の評価に利用できるのか疑問である。ニーズのある欠陥形態やターゲットを絞ってほしい。
当所としての今後の対応
- CFRPの材料評価について、得られた成果を学会発表などで広く提供していきます。
- 蛍光浸透探傷法と超音波探傷法の長所・短所を相互に補完しながらCFRP表面および内部の損傷の因果関係を見出していきます。
- ドローン、航空機、自動車など、当地域におけるCFRP製品の製造企業に対し、現場ニーズのある小径の穴に焦点を当てて、CFRP疲労損傷の進展抑制を検証していきます。
令和3年度 名古屋市工業研究所機関運営会議(研究課題)構成員名簿
(敬称略 順不同)
氏名 |
役職 |
宮﨑 誠一 |
名古屋大学 大学院 工学研究科長・工学部長 電子工学専攻 教授 |
渡辺 義見 |
名古屋工業大学 工学部 物理工学科 材料機能分野 教授 |
末吉 敏弘 |
経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 産業技術課長 |
多田 周二 |
産業技術総合研究所 中部センター 所長代理 |
柘植 良男 |
株式会社中央製作所 取締役 総務部長 |
旭野 欣也 |
シヤチハタ株式会社 研究開発部 部長 |