研究課題評価

令和元年度 機関運営会議(研究課題)

重点事業および指定研究に関する意見聴取について

令和2年1月24日(金)に、令和元年度機関運営会議(研究課題)を開催し、令和元年度で終了する重点事業の事後報告(1件)、令和2年度から実施する重点事業の事前説明(1件)、令和2年度から実施する指定研究の事前説明(2件)を行いました。

1 目的

機関運営会議は、外部の学識者等6名から構成されており、当所の研究計画や研究成果等について客観的な立場からご意見をいただき、効果的・効率的な研究の実施や予算・人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに、研究業務の透明性を高めることを目的としています。

2 開催日時

令和2年1月24日(金) 9時00分~12時00分

3 会議内容と当所の対応

機関運営会議においては、主担当者のプレゼンテーションに対して有意義なご意見を頂きました。
以下に、構成員からのコメントのまとめおよび当所としての対応方針を示します。

1) 重点事業「放熱材料の熱的挙動の解明(H30~R1)」(事後報告)

機関運営会議におけるコメントまとめ

  • 複合材料シートの局所的な熱伝導特性を計測し、放熱のメカニズムの解明、新たな計測手法の確立を目指す意欲的なテーマである。まだ目標には達していないものの、現状も装置の利用促進が図られている。局所的な熱計測は広い分野で利用価値があると思われ、活用分野の拡大を期待する。
  • 導入した設備の性能を活かすために専用治具を独自で開発するなどの工夫を加えながら、測定に関する課題をよく研究している。従来の測定技術と比較し、測定の標準化につながることを期待する。
  • シートと凹凸面の密着性が与える影響なども含めた、系全体の熱伝導性も評価して欲しい。

当所としての今後の対応

  • 残った課題を解決しながら、活用分野の拡大に努めます。
  • 放熱シートの熱伝導率の測定方法については、多くの方法があるものの規格化されていません。本研究で得られた成果をもとに、材料・装置メーカーと協力しながら放熱材料の熱伝導率の測定方法の規格化を目指します。
  • シートの凹凸面の密着性は重要であり、界面の状態が放熱性に与える影響についても引き続き検討していきます。

2) 重点事業「製品トラブルについての原因調査の効率化(R2~R3)」(事前説明)

機関運営会議におけるコメントまとめ

  • 分析機能のついた電子顕微鏡は、材料研究・評価に不可欠な装置であり、導入・更新の意義は極めて大きい。
  • 電子顕微鏡による形態観察や成分分析だけではなく、新たに導入するEBSD(電子後方散乱回折法)の機能や特性について、広く中小企業に理解されるための工夫を行い、利用者の裾野を拡げて欲しい。
  • 材料のサブミクロン領域の結晶解析は、材料を扱うものづくり産業では重要なテーマである。他の研究機関や支援機関のコーディネータにも理解を促し、利用拡大に努めて欲しい。

当所としての今後の対応

  • EBSD(電子後方散乱回折)やEDS(エネルギー分散型X線分光器)を備えた走査型電子顕微鏡の機能や特性を活用し、研究や中小企業の技術課題解決に取り組んでいきます。
  • 本研究により材料の結晶解析への知見を深め、他機関とも情報交換を行うことにより、中小企業への高度な技術支援ができるように努めます。

3) 指定研究「炭素材料を含有した傾斜多孔質複合材に関する研究(R2)」(事前説明)

機関運営会議におけるコメントまとめ

  • 傾斜材料の特性をセンサーに利用する試みが興味深い。他にはない傾斜材ならではの特徴が出せれば、応用範囲の広がりを期待できる。
  • 論文が英文誌に掲載されるなど、研究として高いレベルで行われている。類似技術(圧力センサ)に対する優位性の調査とパートナーとなる企業の探索なども進めて、実用化に取り組んで欲しい。

当所としての今後の対応

  • 傾斜材料ならではの特徴を見極め、その特性を活かしたセンサーや新しい用途への応用方法を検討していきます。
  • 傾斜材料を用いた技術と類似技術との比較をし、学会や論文で発表しPRすることで、企業での活用を促進していきます。

4) 指定研究「熱・光による結合組み換え反応に基づく機能性有機材料の開発(R2)」(事前説明)

機関運営会議におけるコメントまとめ

  • 大変興味深い研究である。既存の自己修復素材との差別化により優位性を確立し、活用する分野の方向性を早めに定めて欲しい。また、早く特許を取得し、中小企業が活用したくなるような成果に仕上げて欲しい。
  • 競合グループの研究内容を十分に調査しながら、将来的には市工研の支援分野である樹脂成形の技術に活かして欲しい。

当所としての今後の対応

  • 知的財産の取得を優先しつつ、具体的な応用分野を定めていきます。
  • 競合グループの研究の進展を調査しつつ、工業研究所の得意技術との連携を探っていきます。

構成員名簿

令和元年度 名古屋市工業研究所機関運営会議(研究課題)構成員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
水谷 法美 名古屋大学 大学院 工学研究科長・工学部長 土木工学専攻 教授
渡辺 義見 名古屋工業大学 大学院 工学研究科 物理工学専攻 教授
篠田 顕一 経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 産業技術課長
山内 幸彦 産業技術総合研究所 中部センター 所長代理
柘植 良男 株式会社中央製作所 取締役 総務部長
旭野 欣也 シヤチハタ株式会社 研究開発部 部長