研究課題評価

平成23年度 第1回研究課題評価

平成23年度 第1回研究課題事後評価について

平成23年7月29日(金)に、平成23年度第1回研究課題評価委員会を開催し、平成22年度で終了した研究の事後評価を行いましたので、その結果を公表します。

1 評価の目的

外部の学識者等7名(別添「名簿」のとおり。)から成る研究課題評価委員会において、当所の研究計画および研究成果を客観的に評価し、効果的・効率的な研究の実施、予算、人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに研究業務の透明性を高めることを目的とする。

2 委員会開催日時

平成23年7月29日(金)13時00分~17時00分

3 内容

前年度で終了した研究11件について下記3項目に関する事前評価を受けた。

  1. 目標の達成度
  2. 達成された成果の意義
  3. 技術としての発展性

4 評価結果

(1)事後評価

評価指標 A B C D
工業研究所の内部評価 2件 8件 1件 0件
評価委員会の評価 2件 6件 3件 0件

A:目標を上回る十分な研究成果が得られた。
B:目標を達成し、見込み通りの研究成果が得られた。
C:目標を概ね達成し、一定の成果が得られた。
D:十分な研究成果が得られなかった。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。)

平成23年度 名古屋市工業研究所研究課題評価委員会 出席委員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
沖 猛雄 名古屋大学 名誉教授
鈴置保雄 名古屋大学 大学院工学研究科長 工学部長
中村 隆 名古屋工業大学 大学院戦略工学専攻 教授
木本 博 中部大学 研究支援センター 教授
神保睦子 大同大学 工学部電気電子工学科 教授
飯田昭夫 いいだ特許事務所 所長
田口義高 中京油脂株式会社 取締役開発センター長

平成23年度 第1回研究課題評価 事後評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
めっき皮膜の熱加工性向上技術の開発 金属/金属界面の熱加工処理等に伴う界面構造変化の評価技術を開発し、膨れや剥離などの欠陥発生との関連性を検討して、企業における品質の向上や、安全で安心なものづくり技術の向上を支援することを目的とする。本研究では、「鉄鋼上ニッケルめっき製品のろう付けに伴う膨れ発生」を取り上げ、膨れ発生のメカニズムの解明と対策技術の確立を図る。
機械診断を補助する簡易予知保全システムの開発 機械・設備の保全は、経済的な観点と診断技術の高度化と相まって、時間基準から状態基準で管理による予知保全へと移行しつつある。しかし、中小企業では、高価な導入コストや診断技術を習熟した作業者の確保が難しいため、予知保全技術の導入は遅れている。そこで、作業者の機械診断を補助し、異常や故障など過負荷が予測されるときに、部品交換や操業条件の変更などを指示できる、簡易予知保全システムの構築を目指す。
マグネシウム合金板材の高機能化と成形に関する研究 エネルギー吸収能が高いポーラス金属(多孔質金属)は、軽量かつ高比剛性で、自動車などの衝撃エネルギー吸収材への応用が期待されている。これにマグネシウムを適用すれば非常に軽量なエネルギー吸収材となりうる。さらに、マグネシウムの板と組み合わせて利用すれば、マグネシウムとしてリサイクルが可能である。本研究では、マグネシウム合金の板成形と機能性の高いポーラス金属を組み合わせることによって、軽量で比強度・比剛性の高いマグネシウム材料の開発を検討する。
光触媒材料の開発および製品への応用 光触媒関連技術は大規模な設備が不要な省エネルギー技術であり、中小企業にとっても開発意欲が強い分野である。当所はチタニア架橋粘土光触媒に関するシーズを有し、現在までに室内VOC対策用光触媒コーティング液を開発して実用化に至っている。本研究では室内VOC対策に焦点を絞り、さらに高性能な光触媒材料の開発を目指す。
環境調和型材料の分析評価技術における課題解決および新規分析法の開発 製品中に含まれる有害金属の分析の需要が高まり、その分析技術の確立が重要になってきている。しかし、現状の金属の分析技術では、標準物質の入手が困難であったり、試料の分解法が確立されていないなど課題も多い。そこで、本研究では環境調和型材料の分析における課題を解決するとともに、新規分析技術の確立を目的とする。
光・電子・イオン機能を有する新規高分子材料の開発 電子デバイスの構成材料として有機系高分子材料を用いた場合、低分子のそれと違い、真空蒸着装置等の高価な機器を用いなくても塗布等による簡便な方法での膜形成が可能となるため、製品の製造コストの軽減が期待できる。そこで、本研究では、上記実情に鑑み、二次電池やECD素子などの有機デバイスを目指した光・電子・イオン機能を有する新規高分子材料の開発を行う。
最適設計のための微小部ひずみ測定技術の開発 従来のひずみ測定技術、たとえばひずみゲージは、測定領域がミリメータオーダのため、ひずみが最も集中する箇所をピンポイントで測定することができない。そこで、微小部のひずみ測定に利用可能なラマン分光法を利用し、マイクロメータ領域のひずみ測定技術の開発を目的とする。
材表面の超はっ水コーティングに関する研究 材料表面をはっ水化する技術は様々な分野で応用されている。紙材表面のはっ水化には、一般にフッ素系またはシリコン系添加剤、ワックス、樹脂被膜などが利用されているが、リサイクルが困難なことや容易には生分解しないことが問題視されており、環境に配慮したはっ水化技術の開発が急務となっている。本研究では、植物由来のゲル化剤が形成する三次元繊維状網目構造体が超はっ水性を示すことを利用し、紙材表面に超はっ水機能を付与し、環境にやさしいはっ水紙の開発を行う。
線状領域撮像方式による画像生成と画像処理 広範囲かつ高精度に画像を撮像する技術とこれによって得られる大きなデータを高速度で演算する技術を、線状領域撮像方式に特化した方法で解決する。
熱・温度に関する材料物性評価技術、熱設計技術の確立 シミュレーション技術を用いた熱対策技術、いわゆる熱設計を製品開発に活用して、開発期間の短縮及び開発費の削減が図られている。本研究では、「熱・温度に関する材料物性評価技術、熱設計技術の確立」を目的として、熱物性評価技術ならびにシミュレーション技術、放熱促進手法の開発を行う。
ランダム振動試験の条件設定に関する研究 当所の振動試験機ではランダム波振動が可能であるが、JIS規格の不備、正弦波試験結果を考慮した試験条件設定の困難さのためほとんど実施されていない。本研究では信頼性試験において将来的に正弦波振動試験からランダム波振動試験へ移行することを目的とし、実環境における振動解析と試験条件の決定方式に関する研究を行う。

平成23年度 第1回研究課題事後評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
めっき皮膜の熱加工性向上技術の開発 11.3 B 11.8 B ・論理的に進め、解析しやすい添加剤、方法を開発してほしい。
・ほぼ目標が達成されており、すでに企業への技術相談に対応している。
・不良解析の手法として大いに期待する。
・断面評価技術をめっき以外の他用途にも技術指導されることを望む。
断面評価技術は、素材、塗膜、コーティングなどの試験にも利用している。最近、要望が多い樹脂などの柔らかい材料に対応できるよう検討していく。
機械診断を補助する簡易予知保全システムの開発 10.3 B 8.3 C ・多種の機器で応用可能となることを期待する。
・実用性に難がある。
・実際役立つまでには、どの程度の期間が必要となるか不明確である。
受託研究やサポイン等により実施例を増やし、より実用的な側面を高めることで、本研究の応用と展開を推し進める。
マグネシウム合金板材の高機能化と成形に関する研究 9.7 B 10.5 B ・コスト面の検討とプレスコントロールの検討がほしい。
・目標は達成されている。今後コストに見合った用途開発により、実用化を期待する。
・技術としては大変評価できるので、この技術を中小企業が活用できる例を考えて「見える化」することが望まれる。
・CF等他素材との比較をして、Mgの特徴を出すように。
コスト、材料特性など本技術によるマグネシウムの特徴を明確にする。その上で特長を生かした用途の開拓を進め中小企業等への普及に努める。
光触媒材料の開発および製品への応用 10.0 B 11.3 B ・今後、可視光についても進められたら面白い。触媒機能をより有効にする組成・措置の検討も欲しい。
・親水性の有害物質を吸着して分解できることを実証したことは評価できる。今後は実際に応用することを目指して研究を続けて欲しい。
・本年度新たに発生した問題点として光源のLED化も考慮した研究をすることが望ましい。
・新しいシーズとして開発した層間光触媒の応用用途を考えて欲しい。
今後、可視光応答型光触媒の開発に向けて研究を行う。LEDの極大波長が450nm以降であることから、より長波長で駆動する光触媒の開発を目指す。
環境調和型材料の分析評価技術における課題解決および新規分析法の開発 10.3 B 12.8 A ・分析法は大変重要なので、分析マニュアル等得られた成果を広く提供し、標準化あるいは工業研究所手法として確立できると良い。
・TiO2(チタニア)の分析は大変有意義と思う。
・成果を広く利用してもらえるようにして欲しい。
・現場の要請に応えた意義ある研究と思う。
成果として得られた分析マニュアルを広く活用していただけるよう、積極的な広報に努める。
光・電子・イオン機能を有する新規高分子材料の開発 11.0 B 13.8 A ・メカニズムの解明と更なる技術開発が期待される。
・目標以上の成果をあげている。今後は材料の耐久性も考えて、発展を期待する。
・非常に良い成果が達成されているので、実用化に向けた研究を継続することを望む。
・既存材料との差別化を理解して、具体的用途に向けた研究を望む。
・デバイス作成専門者との共同開発が良い。
材料の面からのみならず、素子作成の面からも研究を進め、従来よりも優れた特性を持つ電子部材の開発と実用化を目指す。
最適設計のための微小部ひずみ測定技術の開発 10.8 B 8.7 C ・興味深い研究である。配向制御など今後の発展を期待する。
・利用できるところをよく検討して欲しい。
・センサーを改良して感度の向上を期待したい。
開発した非加熱型センサ材料の分子設計指針に基づき、配向しやすく感度の高い材料の開発や従来技術では測定が難しい応力集中部の局所ひずみ測定技術の開発に取り組む。
紙材表面の超はっ水コーティングに関する研究 12.2 A 10.5 B ・段ボール紙以外の使用先用途の開発を検討すべき。
・はっ水性の寿命の検討が必要と思われる。
・短い研究期間にもかかわらず、立派な成果をあげている。A-STEPに採択されているので、コストに見合った用途を探して実用化につなげて欲しい。
・研究成果については評価できるが、市工研の役割としての中小企業への応用展開が未定なのは残念。応用開発を継続して欲しい。
現在進めている受託研究およびA-STEPの中で紙のはっ水性寿命の向上を含めた応用展開を検討する。今後も情報発信を継続し、中小企業への普及を目指す。
線状領域撮像方式による画像生成と画像処理 12.3 A 10.7 B ・応用法の開発が重要と思われる。
・特徴をもっと生かす方向がある様な気がする。
・技術の応用分野の拡大を期待する。
本技術の特徴を生かし、より実用的な開発を進めると共に、様々な分野への応用を行う。
熱・温度に関する材料物性評価技術、熱設計技術の確立 11.7 B 10.0 B ・実用上重要であり、また今後の課題も多い。
・実技術(装置等)への発展が少し不明確。
今後は、熱物性評価技術の精度向上に取り組むとともに、電磁界解析との連成を図ることによって、自動車用電子制御機器の設計効率化を目指す。
ランダム振動試験の条件設定に関する研究 8.5 C 8.7 C ・実用上は重要と思われる。いかにして、一般性、汎用性のあるデータにするかについても検討できるとよい。
・公的機関として必要な研究である。一般化には多くの研究が必要となる。
・実測データと振動試験との対応がやや不明確に感じられる。
本技術を普及するため,さらなるデータの検討および解析結果の検証を行う。

・評点は、1.目標の達成度、2.達成された成果の意義、3.技術としての発展性の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:目標を上回る十分な研究成果が得られた。 B:目標を達成し、見込み通りの研究成果が得られた。
C:目標を概ね達成し、一定の成果が得られた。 D:十分な研究成果が得られなかった。