研究課題評価

平成18年度 研究課題評価

平成18年度研究課題事前評価、中間評価および事後評価について

平成19年1月12日(金)に、平成18年度研究課題評価委員会を開催し、平成19年度から実施する研究の事前評価、平成17年度より実施している研究の中間評価を行いましたので、その結果を公表します。

1 評価の目的

外部の学識者等8名(別添「名簿」のとおり。)から成る研究課題評価委員会において、当所の研究計画および研究成果を客観的に評価し、効果的・効率的な研究の実施、予算、人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに研究業務の透明性を高めることを目的とする。

2 委員会開催日時

平成19年1月12日(金)13時00分~16時30分

3 内容

平成19年度から実施する研究のうち、コア技術に係る研究5件について下記5項目に関する事前評価を受けた。また、平成17年度より実施している主要研究9件について下記5項目に関する中間評価を受けた。

  1. 当所の使命との適合性
  2. 研究目的の妥当性
  3. 研究内容の妥当性
  4. 研究実施体制の妥当性
  5. 成果の波及効果

4 評価結果

(1)事前評価

評価指標 A B C
工業研究所の内部評価 4件 1件 0件
評価委員会の評価 2件 3件 0件

A:計画どおり実施する。
B:一部修正して実施する。
C:計画を変更して実施する。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。)

(2)中間評価

評価指標 A B C
工業研究所の内部評価 3件 6件 0件
評価委員会の評価 2件 5件 2件

A:計画どおり実施する。
B:一部修正して実施する。
C:計画を変更して実施する。
★評価結果に対する当所の対応(別添「評価表」のとおり。

平成18年度 名古屋市工業研究所研究課題評価委員会 出席委員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
沖 猛雄 名古屋大学 名誉教授
澤木宣彦 名古屋大学 大学院工学研究科長 工学部長
木本 博 中部大学 総合工学研究所 教授
末松良一 豊田工業高等専門学校 校長
名古屋大学 名誉教授
飯田昭夫 いいだ特許事務所 所長
神谷昭司 株式会社三琇プレシジョン 代表取締役会長
萩原義昭 萩原電気株式会社 代表取締役社長
竹中 修 科学技術交流財団 知的クラスター創成事業本部 事業総括

平成18年度研究課題評価 事前評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
機能性有機・無機ハイブリッド皮膜によるコーティング技術の開発 本研究では化学溶液法を用いて、シリカ等の無機成分と樹脂や有機シラン化合物等の有機成分の組成や反応性を制御してハイブリッド化することで、セラミックス、金属および木材等の材料表面に、親水・撥水性、耐擦傷性、防汚や耐食性などの機能を発現させ、しかもサブミクロンの薄膜から数十ミクロンの厚膜まで対応可能な有機・無機ハイブリッド皮膜の作製に関する技術開発を行う。材料表面のコーティングにおける課題は、皮膜の基板材料上における密着性の向上や剥離の防止であるが、皮膜の前駆体組成を最適化することにより課題を解決し、機能の向上化を目指す。
新しい亜鉛合金めっき技術の開発 本研究では、めっき可能な亜鉛合金の種類を検討するとともに、めっき浴組成、電解条件の最適化を図り、亜鉛合金めっき皮膜の析出結晶の形状を制御することにより耐食性向上を図り、亜鉛めっきの後処理を不要とする技術を開発することを目指す。
環境を保全する新規吸水・吸油材料の開発 当所がこれまでコア技術として培ってきた環境材料技術とナノ材料技術により、付加価値を高めた独自の環境対応型吸水・吸油材料を開発してその用途をさらに拡大し、環境に配慮した製品および製造技術の開発や生産活動に課題を抱える中小企業を支援し、企業の研究・技術開発能力を強化することを目的とする。特に、高性能、高機能吸水・吸油材料を開発し、超はっ水性材料などの機能材料の開発、含油廃水などの廃液処理、排水中の有価金属などの資源回収を目標とする。
ナノ技術を応用した表面機能強化に関する研究 はっ水性部材の需要は、自動車、建築、被服、工学部品など広範囲にわたり、将来巨大な潜在的市場が待ち受けていると言われている。本研究は、複雑形状部材へ有機シラン系の自己組織化単分子膜(SAM:Self-assembled Monolayer)をコーティングすることによってはっ水性機能を付与する技術を開発する。特殊な高額な機器を必要としない簡便な方法であるので、中小企業にはっ水性部材市場に参入する可能性を開くものである。
燃料電池の開発と応用 本技術開発では、燃料電池の実用化、応用技術として電気製品電源への搭載、特にニーズが増加すると思われる小型電気機器への応用を可能とすることを目標とする。電池を実用化する際には電池システムや電池の搭載に適した電気機器の開発が不可欠となる。そこで材料開発から電池特性評価までが可能である当所の技術を活かし、実用化技術、電池評価技術の開発を行う。

平成18年度研究課題評価 中間評価課題概要

研究テーマ名 研究の概要
加工機械等の性能診断技術の確立 機械設備の状態を適宜監視し、故障や過負荷が予想されるときにのみ、部品交換や操業条件の変更などの対策ができる診断技術を構築する。その診断技術は大企業の大規模工程では開発費を投入し、導入されつつあるが、中小企業では開発および導入が困難な場合が多いようである。そこで、加工機械の加工工具を事例として取り上げ、簡易な診断技術の開発を試みる。その事例をもとに各種機械の診断技術に応用する。
バイオマス由来の環境適応材料の開発と応用 石油由来のプラスチックの代替として、環境に配慮したバイオマス由来の生分解性プラスチックの開発が進められている。その用途は、従来の農業用製品や土木資材だけではなく、電気・電子、自動車といった工業分野の製品へと急速に拡大しようとしている。しかし、市場で要求される性能、機能を十分に満たしておらず、また、従来の成形加工技術をそのまま活用し難いという問題があり、普及に至っていない。そのため、プラスチックの関連企業では、この新しいプラスチック材料の高性能化、高機能化、成形加工性の改良等に関する技術開発が求められている。そこで、工業製品への応用を目指して、耐衝撃性を改善させた材料を開発し、その成形加工技術を確立する。
機能性添加剤を目指した材料開発 プラスチックは、可塑剤や強化剤等の様々な添加剤を加えることによって、新たな機能を加えることができる。しかし、一般に、有機系の添加剤は、低分子量の有機化合物を用いているため、樹脂に練り込んで成形品とした場合、時間の経過と共に樹脂に含有されている添加剤が樹脂の表面に移動するという、ブリード現象を起こしやすくなる。このため、添加剤が脱離しやすくなり、添加剤の効果が時間とともに低下してしまうという問題が生じる。また、こうして表面に移動した添加剤が外部に流れ出して環境汚染を起こす可能性がある。そこで、本研究は、上記実情に鑑み、環境に優しい生分解性プラスチックへの添加剤として用いることが可能であるうえ、環境流出が抑えられ、なおかつプラスチックに新しい機能を与え、さらにこの素材を用いて成形体を作成することを目的として行う。
超臨界流体の利用によるバイオプラスチックのリサイクル技術の開発 資源・環境問題の理由から、バイオマスを原料とするポリ乳酸などのバイオプラスチックの利用が今後増加することが予想され、中小企業もその対応が必要になっている。これらのバイオプラスチックは生分解性を有しているが、大量に廃棄されれば新たな環境汚染の原因となり、省資源の観点からも好ましくない。バイオプラスチック利用には成形材料の性能不足や従来の加工技術が活かせないなど、解決すべき問題が多いが、それらの課題解決とともにリサイクル技術の開発も必要となる。本研究はポリ乳酸を中心とするバイオプラスチックをリサイクルする技術を確立し、これによってバイオプラスチックの利用を促進することを目的とする。
移動型画像計測システム カメラを移動することによる広範囲な画像生成とそれを使った3次元形状測定技術の確立を行う。カメラを移動させながら計測を行う技術は、製造業における外観検査などで多く用いられているが、現在市販されている汎用計測装置は、視野が狭く、また、計測条件もかぎられているのが現状である。また、計測作業を行う中小企業からは、コストの面から高性能な一般民生機器を計測装置に利用できないものかと相談を受けることも多い。そこで、中小企業の現場作業において実用できる技術や装置を開発していく。ここでは、高速度に移動するカメラを使った3次元形状計測装置を試作し、これを広範囲な道路表面の形状計測に応用する。
金属材料の破損・不良調査事例のデータベース化 中小企業からの金属材料の破損・不良調査依頼に対して、今後もより的確・迅速に応えられる体制を維持あるいは強化していくために、過去の調査事例を活用できるデータベースを構築する。
熱・温度に関する材料物性評価、熱設計技術 電子機器の小型化あるいは高性能化に伴う発熱量の増加が深刻な問題になっている。実際、電子部品は熱に対して脆弱なものが多く、使用温度が10℃上昇すると信頼性が半減するとまでいわれている。これに関連して、シミュレーションによる熱対策技術、いわゆる熱設計を製品開発に活用して、開発期間の短縮及び開発費の削減が図られている。このような背景から、本研究では、以下を目的として共同研究及び指定研究に取り組む。
金属強化マグネシウム合金複合材料の創製 構造用材料としてのマグネシウム合金は現状では強度や剛性の低さが問題点として挙げられる。また、AZ91合金のような添加元素の多い高強度合金では、マグネシウムの特長の一つである制振性は損なわれてしまうため、制振性を発揮するためにはできるだけ合金元素を少なくする必要がある。しかし、合金元素が少ないと機械的性質が低くなってしまう。そこで、純マグネシウムを中心とした合金元素の低いマグネシウム合金をマトリックス、強化材を金属とした複合材料を創製し、制振性・リサイクル性を保ちながら強度・剛性を向上させたマグネシウム合金の開発を目指す。
製品の長寿命化技術 製品の長寿命化は、形状変更などにより応力集中やき裂進展速度を低下させることによって実現可能である。しかし、従来の方法では、破壊起点やき裂先端など微小部に発生する応力を詳細に測定できないことから、ラマン分光法による微小部応力測定技術を開発し、形状変更などによる応力集中やき裂進展速度の低減効果を評価する。主として形状変更に基づく長寿命化であることから、中小企業の高いモノづくり技術を生かした長寿命製品の開発が可能である。

平成18年度研究課題事前評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
機能性有機・無機ハイブリット皮膜によるコーティング技術の開発 12.8 A 10.9 B ・最初にニーズ(特に中小企業)を明確にして、研究計画を策定すること。
・期待値は大きいので、目標を絞って集中的に取り組んで欲しい。
・参画する研究者の数が少ないと思われる。
工業研究所の技術シーズである化学溶液法を用いたコーティング技術の強みが発揮できる分野で中小企業のニーズとのマッチングを図りながら研究を実施する。
新しい亜鉛合金めっき技術の開発 13.4 A 10.3 B ・研究内容が具体性に欠ける。
・実施内容と成果の間の論理性を明確にして研究実施して欲しい。
・市工研として、本テーマを取上げる背景、理由が不明確である。
・メーカーが実施している研究開発との違いの明確化が必要である。
・実用化につながる成果を期待する。
当地域のめっき関連中小企業が実施できる環境に負荷を与えない新しいめっき技術の開発を目指し、研究内容を具体化したうえで実施する。
環境を保全する新規吸水・給油材料の開発 13.5 A 10.9 B ・市場動向に対する考察の不足を感ずる。
・市場ニーズの把握が必要である。
・目標をしぼり込んで、より明確にすべきである。
・対象物質をはっきりさせること。
・開発材料の新規性が見えにくい。
19年度は、企業訪問などにより市場ニーズを把握しつつ、超はっ水性材料の開発、切削液中の油分を吸収する新規ゲル化剤の合成、廃液中の有価金属の固定化の3つサブテーマを実施し、より実用化の可能性の高いテーマに絞り込んでいく。
ナノ技術を応用した表面機能強化に関する研究 11.5 B 11.8 A ・先端技術の中小企業への橋渡しの役割が市工研にはあるが、その点からの説明が欠落していた。研究そのものには興味がある。
・知的クラスターの事業テーマとの関係を明確にして研究実施すべきである。
・知的クラスターの成果をさらに発展させることを期待する。
・特に中小企業での応用に着目したニーズの明確化が必要である。
・ユーザと物理的、化学的、密着性なども調べると良い。
先端技術シーズを中小企業に移転するという当該研究の目標を明確にしたうえで、中小企業での実用化を視野に入れて研究を実施する。
燃料電池の開発と応用 12.1 A 12.3 A ・市工研のリーダシップを望む。
・他機関との共同作業において強い指導性が望ましい。
・外部依存度が大きいので研究所側の人員増加も必要と思われる。
・開発競争が激しい分野、ぜひ得意分野を伸ばし、テーマを絞ってがんばって欲しい。
研究の実施においては、工業研究所が主体性を発揮し、工業研究所の目的に合致する成果が得られるようにする。

・評点は、1.当所の使命との適合性、2.研究目的の妥当性、3.研究内容の妥当性、4.研究実施体制の妥当性、5.成果の波及効果の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:計画どおり実施する。 B:一部修正して実施する。 C:計画を変更して実施する。

平成18年度研究課題中間評価表

研究テーマ名

内部評価 外部評価 当所の取り扱い
評点 評価 評点 評価 コメント
加工機械等の性能診断技術の確立 7.3 B 6.4 C 加工音によりドリル寿命を判定する評価手法について早急に再検討すること。
条件や対象物を増やしてデータを多く集めること。
ドリル加工における音、振動と寿命との相関を明らかにし、評価手法を確立する。その後、ドリルや被加工物といった加工条件を種々に変えてデータ蓄積を図る。実施にあたっては、計画、分担を見直す。
バイオマス由来の環境適応材料の開発と応用 11.6 A 10.6 A ユーザーサイドでのニーズを充分に把握し、実用化を図ること。 最終製品を想定した評価も取り入れながら、研究計画書のとおり実施する。
機能性添加剤を目指した材料開発 10.1 B 8.1 B 産業界のニーズを調査し、ニーズに応える目標や具体的研究内容とすること。 フェナザシリン系化合物の特徴を活かし、電気化学的な色や透過率の変化機能を有する新規材料の開発を目標とする。また、企業ニーズとのマッチングを図りながら、研究を実施する。
超臨界流体の利用によるバイオプラスチックのリサイクル技術の開発 9.0 B 7.8 B これまでの結果については評価できるが、当初計画とは大きく異なっているので、抜本的な対応が必要と思われる。 当初の計画どおりポリ乳酸のリサイクルを目的とし、超臨界二酸化炭素を用いる分解については、触媒など反応条件を再検討し、ラクチドへの分解を目指す。これとともに、乳酸メチルへの分解について二酸化炭素を用いない他の分解法の検討を行う。
移動型画像計測システム 10.7 A 10.3 B 実用化が期待できる。路面以外の道路状況の計測状況の拡大や更なる応用分野を検討すると良い。 システムの適用範囲を明確にして、特徴を生かした応用面を考えながら研究を実施する。
金属材料の破損・不良調査事故のデータベース化 10.5 B 8.3 B データを充実するため、他の公設試験研究機関や団体などとデータを共有化することが望ましい。 データ数を増やすため、過去の多数の依頼試験の結果の洗い出しと入力を早急に進める。外部の公設研究機関、企業との連携については、企業秘密とも絡む問題が含まれるので、相互利用の可能性から調査を始める。
熱・温度に関する材料物性評価、熱設計評価 11.3 A 11.4 A 成果を期待する。様々な電子機器への適用を視野に入れると良い。 様々な電子機器へ適用できるような展開を視野に入れながら、計画に沿って実施する。
金属強化マグネシウム合金複合材料の創製 7.8 B 6.2 C マグネシウムの将来性には期待できるが複合材料では強化剤の均一化には難点があり、均一に分散させるための新規手法が必要である。 強化材の分散性を向上させる方策として、Ca添加によりマグネシウムの溶湯の粘性を上げて強化材が沈殿しにくくする他、チタン金属化合物のその場反応から金属チタンの微粒子を生成させる方法を検討する。
製品の長寿命化技術 10.0 B 8.6 B 実用化のために、測定対象を明確化し、必要なし様(感度、性能等)を明らかにして研究開発をすすめること。 依頼試験、企業訪問やひずみ測定の実例を示すことなどを通じて、企業ニーズ、要望を把握し、要求される仕様を満たす微小部ひずみ測定技術の確立を進める。

・評点は、1.当所の使命との適合性、2.研究目的の妥当性、3.研究内容の妥当性、4.研究実施体制の妥当性、5.成果の波及効果の各項目(5点満点)における、評価委員の平均点の合計
・評価は、A:計画どおり実施する。 B:一部修正して実施する。 C:計画を変更して実施する。