研究課題評価

令和5年度 機関運営会議(研究課題)

重点事業および指定研究に関する意見聴取について

令和6年1月11日(木)に、令和5年度機関運営会議(研究課題)を開催し、令和5年度で終了する重点事業の事後報告(1件)、令和6年度から実施する重点事業の事前説明(1件)、令和6年度から実施する指定研究の事前説明(2件)を行いました。

1 目的

機関運営会議は、外部の学識者等5名から構成されており、当所の研究計画や研究成果等について客観的な立場からご意見をいただき、効果的・効率的な研究の実施や予算・人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに、研究業務の透明性を高めることを目的としています。

2 開催日時

令和6年1月11日(木) 14時00分~17時00分

3 会議内容と当所の対応

機関運営会議においては、主担当者のプレゼンテーションに対して有意義なご意見を頂きました。
以下に、構成員からのコメントのまとめおよび当所としての対応方針を示します。

1) 重点事業「防音材の特性評価技術の高度化(R4~R5)」(事後報告)

機関運営会議のコメントまとめ
・音響管法と実験室法とで測定結果に特徴が現れることを示したことは成果である。広くPRして防音材料の開発を手がける企業等に対して貢献することを期待する。
・材質や形状、内部構造等の異なる材料の定量的なデータを蓄積するとともに、実環境のシミュレーションやAIとの併用により最適な仕様を予測する等、企業ニーズに即した技術支援を目指していただきたい。
・音響特性の分かった材料での比較や使用環境下で特性が変わる材料等の研究を進め、成果を論文としてまとめていただきたい。

当所としての今後の対応
・中小企業が防音材料を開発する際の評価に利用できるように、音響管法、実験室法の測定結果および特性を講演会、見学、月刊名工研等を通して周知することにより、対外的に広くPRしていきます。
・試験等で取得したデータから得られた知見を蓄積し、独自の考察を加えることで、各企業が求めている課題解決に向けた技術支援を目指します。将来的には、音響解析ソフトウェアを導入することで、実環境での音響特性の予測や最適な防音設計の指導が行えるよう目指します。
・同一材料を用いて、試料厚さ等の材料パラメータや温度、湿度等の試験環境を変化させることで音響特性との関係性を調査し、さらなる知見を獲得していきます。また、研究で得られた成果を学会発表等を通して外部発信に努めていきます。

 

2) 重点事業「大型部品の三次元形状評価技術の高度化(R6~R7)」(事前説明)

機関運営会議のコメントまとめ
・設計データと製品との差の議論にとどまらず、評価技術としての重要性を明確にし、シミュレーションと併せる等研究的エッセンスを取り入れていただきたい。
・従来の測定手法とはどこが異なり、何をめざすのか、研究内容を具体的に示すべきである。
・フォトグラメトリ法によりどの程度高精度な測定ができるかがポイントである。大型の製品の測定において高精度を達成することで、中小企業にとって活用範囲が広がることを期待する。

当所としての今後の対応
・強度評価における実製品とCADモデルとの形状差に起因する解析精度の低下を解決するため、三次元デジタイザを用いた計測とシミュレーションにより製造時の溶接ビード形成等の形状変化によって発生する性能の差の検証に取り組みます。
・フォトグラメトリを新たに活用することで精度向上を目指し、測定誤差要因の把握および低減手法の検討等、実際の企業支援に役立つような研究を目指します。
・形状の位置を決定する参照点の配置場所や数を考慮しながらフォトグラメトリを活用することで、大型部品の測定精度向上に取り組むとともに、その技術や知見を分かりやすく中小企業に示すことに努めます。

 

3) 指定研究「AIを用いた直動機構の異常検知手法に関する研究(R6)」(事前説明)

機関運営会議のコメントまとめ
・音による故障予知・予防保全が確立できれば機械装置の生産性の向上に寄与できる。研究成果を整理し、具体的な適用事例としてまとめる等、利用しやすい技術として展開されることを期待する。
・故障の原因や場所を特定するための具体的手法を盛り込むとともに、負荷の違いによる音の違い等の検証を行うことで、よりよい研究になることを期待する。
・研究の新規性もありポテンシャルは高いと思われる。成果を学会等で積極的に発表し、共同研究や外部資金の獲得に繋げていただきたい。

当所としての今後の対応
・対象とする直動機構は加工機や供給装置、検査機等多くの産業機器で用いられている駆動部分であるため、軸ズレの異常等の故障予知・予防保全として活用される技術の確立を目指します。成果として得られたデータの取得方法、AI解析手法を論文や学会発表等で公表します。
・不具合の特定に対するニーズに応えられるよう、学会や論文を通して情報収集に努め、解析方法を検討します。また、おもりによる負荷や移動速度が異なる場合等、取得される音の違う状況におけるデータを評価し、工場等を想定した実用性の高い異常検知手法の確立ができるように研究を進めます。
・電気・情報系の学会で発表するとともに、本研究の成果を活用した技術者向けの研修を実施して企業との交流を深め、共同研究や外部資金の獲得に繋げられるよう努力します。

 

4) 指定研究「廃電子機器リサイクルのための分析技術に関する研究 (R6)」(事前説明)

機関運営会議のコメントまとめ
・廃電子基板の価値を知りたいという企業のニーズに適切に対応できる研究内容とし、その成果が企業から活用されることを期待する。
・既知の元素組成のサンプルを作製し、蛍光X線を用いた定量精度を検討するほか、分析手法の標準化・規格化をめざしていただきたい。
・現段階でどこまで進捗し、実用化に向けてどのような課題が残っているのかを明確にし、課題クリアに向けた時間軸を明示すべきである。

当所としての今後の対応
・企業ニーズの高い金・銀・銅に着目し、回収率と分析精度を高め、分析法として信頼性の確保に取り組みます。依頼試験や受託研究で活用される技術を目指して研究を推進します。
・分析の妨げとなる共存元素の存在を踏まえ、検量線法による分析における定量の正確さの検討を行うとともに、標準化に求められる前処理法の妥当性を示すために、既知量の金・銀・銅を添加した試料からの回収実験を実施します。
・上半期は基板に含まれる共存元素が存在する条件で標準試料の作製と検量線法による分析に取り組み、下半期は妥当性の検証と最適な分析プロセスの確立を目指します。

令和5年度 名古屋市工業研究所機関運営会議(研究課題)構成員名簿

(敬称略 順不同)

氏名 役職
渡辺 義見 国立大学法人 名古屋工業大学 大学院 工学研究科
工学専攻(物理工学領域) 教授
坂 直樹 経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 産業技術革新課長
多田 周二 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 中部センター 所長代理
旭野 欣也 シヤチハタ株式会社 研究開発部 部長
柘植 良男 株式会社中央製作所 取締役 経営企画室長