令和8年1月19日(月)に、令和7年度機関運営会議(研究課題)を開催し、令和7年度で終了する重点事業の事後報告(1件)、令和8年度から実施する重点事業の事前説明(1件)、令和8年度から実施する指定研究の事前説明(3件)を行いました。
機関運営会議は、外部の学識者等5名から構成されており、当所の研究計画や研究成果等について客観的な立場からご意見をいただき、効果的・効率的な研究の実施や予算・人員等の重点的・効率的配分に反映させるとともに、研究業務の透明性を高めることを目的としています。
令和8年1月19日(月) 14時00分~16時50分
機関運営会議においては、主担当者のプレゼンテーションに対して有意義なご意見を頂きました。
以下に、構成員からのコメントのまとめおよび当所としての対応方針を示します。
1) 重点事業「大型部品の三次元形状評価技術の高度化(R6~R7)」(事後報告)
機関運営会議のコメントまとめ
・依頼試験や技術相談で目標値を大きく上回る実績を上げており、本測定装置を導入した効果が十分に表れている。また、企業ニーズにもマッチしており、ユーザーの満足度も高いものと思われる。
・フォトグラメトリの利用によって大型部品の三次元形状が高精度で取得可能になったことは、当地域の企業にとっても意義がある。講習会や広報に注力して、さらなる利用促進を図ってほしい。
・形状測定に留まらず、温度や荷重を加えた時の形状変化など、今まで対応できなかった現象の解明にも繋げてほしい。また、X線CT等と連携することによって、応用範囲の拡大を目指してほしい。
当所としての今後の対応
・当地域の企業から形状測定に関する多くの相談や測定依頼をいただき、本装置を有効に活用することができました。今後も精度の高い測定技術の提供に努め、利用満足度の維持・向上を目指します。
・フォトグラメトリを活用した大型部品の高精度形状測定について、より多くの企業に活用いただけるよう、本技術の特長や有効性を分かりやすく発信していきます。
・測定方法や測定データの活用方法について検討を進め、温度変化や荷重による変形評価への適用を目指します。また、X線CTをはじめとした他の機器との連携によって、三次元形状評価技術の高度化を図ります。
2) 重点事業「赤外イメージングによる材料分析の高度化(R8~R9)」(事前説明)
機関運営会議のコメントまとめ
・従来から依頼の多い付着物の定性分析では、付着量が少ない場合の検出限界の向上に取り組むとよい。加えて、深さ方向の面分析による新たな活用方法を検討し、その成果を積極的に発信することで、本装置がより多くの企業に利用されることを期待する。
・リサイクル部材の利用が進む中、樹脂の劣化評価に関する企業ニーズは高い。そのニーズへの対応として、本装置を用いた分析評価ノウハウを構築するとともに、劣化現象の調査等を通じて高い専門性を身に着け、劣化対策を含む工学的な助言ができるとよい。
・樹脂の劣化状態を評価する技術の向上に留まらず、劣化の原因やメカニズムを明らかにする研究に取り組まれることを期待する。その場合、本装置だけでなく他の有機分析機器を組み合わせ、総合的に解析する体制を整えてほしい。
当所としての今後の対応
・素材上の付着物の分析では、付着物と素材のスペクトルの差を求めるなど、微量分析に有効な測定法を検討します。また、近隣公設試による事例が少ない深さ方向の劣化分析の結果について、講演会や研修を通じて情報発信し、本装置の利用促進につなげます。
・断面観察試料の作製ノウハウを習得し、分析事例を蓄積して劣化の分析・解析技術を確立します。また、樹脂の種類や使用状況に応じた劣化の防止・改善策を提案できるよう努めます。
・劣化の原因やメカニズムの解明に関する研究に向け、サイズ排除クロマトグラフィーや熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計、熱分析装置等を用いて多角的に解析できる体制を構築します。
3) 指定研究「特殊形状試験片による異方性降伏関数の同定(R8)」(事前説明)
機関運営会議のコメントまとめ
・単軸引張試験機を用いて簡便に二軸応力状態をつくることができる点を評価したい。ひずみ速度依存性も考慮した新たな異方性降伏関数の提案に繋がるとよい。
・異方性降伏関数を用いたCAE解析はハイテン材などの難加工材で有効であり、中小企業の製品開発に活用できる。更にアルミニウムやマグネシウム、チタンなどの軽金属材料への展開を望む。
・本手法は試験片形状を工夫することで多軸応力状態を実現することが可能であり、非常に独創性が高いといえる。更に研究を進めて論文投稿できるような成果が出ることを期待する。
当所としての今後の対応
・金属材料が塑性変形する際の流動応力や塑性異方性には、ひずみ速度依存性が見られることがあります。ひずみ速度を変化させて金属材料の異方性降伏関数を同定し、降伏曲面の形状や大きさへの影響を検討します。
・現在取り組んでいる鉄鋼材料のほか、難加工材や軽金属材料まで対象を広げて異方性降伏関数の同定を進めます。その結果を元に高精度な塑性加工解析を実施し、成形限界や加工時の不具合を事前に予測・回避できるよう技術の開発を進めます。
・本手法による塑性加工解析と同条件下で行う塑性加工実験の結果を比較し、本手法で同定した異方性降伏関数の妥当性を検証します。また、これらの成果を体系的にまとめ、論文投稿を目指します。
4) 指定研究「IHリフローにおける局所加熱部の非接触温度計測の検討 (R8)」(事前説明)
機関運営会議のコメントまとめ
・インピーダンスの温度依存性を利用して、加熱用コイルを温度センサーとして用いている点に新規性がある。既存の技術に対するメリット、デメリットを明確にしたうえで研究を進めてほしい。
・本手法を用いることによって、現状でもミリメートルオーダーの温度分布が得られている。局所加熱時の温度管理が可能であり、部品の取り換えなど機器の保全や修繕に適用できるのではないか。
・これまでは難しかった選択的局所加熱に対する温度評価法として確立できる可能性が高い。実用化のためには、製造現場で測定できるシステムを構築して、ユーザーの理解を高める必要がある。
当所としての今後の対応
・既存の温度測定技術として熱電対やサーモグラフィ等を対象に、応答特性や測定対象、導入コストなどの観点から比較整理し、本手法の特長と適用範囲を明確化します。
・部品交換や不良はんだ接合部の補修も対象として、はんだやリード等の局所部位を狙った選択的な局所加熱条件(周波数、出力、加熱時間など)を導出するとともに、周辺部品への熱影響を抑える方法を検討します。
・製造現場での運用を見据え、測定システムとして必要となる要件を整理するとともに、企業での実証実験につなげるため、得られた成果について学会発表や講演会を通して外部に発信していきます。
5) 指定研究「高強度SUS基複合材料の曲げ強度に及ぼすσ相微細化の効果 (R8)」(事前説明)
機関運営会議のコメントまとめ
・通常は発生を避けることが常識である硬くて脆いσ相を、複合材料の強化材として活用し、リサイクル性も向上させる点がユニークな研究である。研究内容を発展させて特許の権利化を検討するとともに、製品化を目指して関連企業にPRを進めてほしい。
・破壊の起点箇所を明らかにすることで、強度の向上につながる方策が見えてくる。また、界面に存在するボイドが曲げ強度の低下の原因であれば、ボイドの生成メカニズムを調べ、ボイド形成の防止策を示せるとよい。
・複合材料を放電プラズマ焼結(SPS)する際、σ相の分解を考慮して焼結温度を抑えている。しかし、SPSは短時間であれば非平衡状態のまま焼結できるため、σ相の分解を恐れず、より高い焼結温度で検討してほしい。
当所としての今後の対応
・微細化したσ相の活用を検討して強度を改善し、高硬度、耐食性およびリサイクル性を合わせ持つステンレス基複合材料を開発します。また、特許により権利化を目指すとともに、得られた成果は講演会等を通じて関連企業に積極的にPRし、本複合材料の製品化を目指します。
・曲げ試験後の試験片の破面を電子顕微鏡で観察し、破壊の起点となりうるσ相と母材との界面やボイド等の影響を調べます。また、微細化したσ相の均一分散や加工条件を検討し、相対密度100%の緻密な複合材料を目指します。
・SPSの特徴である高速昇温を活かし、σ相の分解温度を超える高温条件でも、σ相が残存する緻密な複合材料が作製できる焼結プロセスを検討します。
(敬称略 順不同)
| 氏名 | 役職 |
| 小橋 眞 | 名古屋大学 大学院工学研究科長・工学部長 大学院工学研究科 物質プロセス工学専攻 工学部マテリアル工学科 教授 |
| 渡辺 義見 | 名古屋工業大学 大学院工学研究科 工学専攻 物理工学系プログラム 教授 |
| 前納 一友 | 経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課長 |
| 加藤 且也 | 産業技術総合研究所 中部センター 所長代理 |
| 柘植 良男 | 株式会社中央製作所 常務取締役 |