研究報告

平成28年度研究報告

重点事業 (2テーマ)

事業名 振動特性評価技術の開発
担当 システム技術部
補助事業名 公設工業試験研究所等における機械設備拡充補助事業〈(公財)JKA〉

1.目的

輸送用機器に代表される製品は軽量化が進んでいるため、騒音・振動が発生しやすい構造となっており、その対策が求められている。制振技術による騒音・振動対策方法としては、制振材料を使用して対象製品に制振性能を付与する方法が効果的である。本研究では、JIS K7391振動減衰特性試験方法による制振性能の評価技術を確立するとともに、実製品・部品へ応用するための知見を得る。

2.内容

制振性能評価指標である損失係数は、JIS K7391に規定されている2種類のはり試験方法(片持ちはり法および中央加振法)によって行われる。本研究では、下記2点について両手法による測定結果を比較した。

①片持ちはり法と中央加振法の測定結果間の差異検討

JIS K7391標準試験片を用いて両手法を比較した。

②片持ちはり法試験における非磁性試験片への小鉄片貼付の影響検討

片持ちはり法試験において非磁性試験片を測定する場合に使用する小鉄片の影響について、小鉄片貼付が不要である中央加振法と比較した。非磁性試験片はABS材を用いた。

3.考察

JIS K7391標準試験片を用いて片持ちはり法と中央加振法による試験結果を比較した結果、手法によりわずかに差があるが総じて一致した。片持ちはり法試験において非磁性試験片を測定する場合に使用する小鉄片の影響については、中央加振法と比較して片持ちはり法の共振周波数は数%小さかったが、損失係数への影響はほとんどないことが確認できた。また、試験片が厚い方が中央加振法との共振周波数差は小さかった。これは、試験片質量に対する小鉄片質量の影響が小さくなったためと考えられる。

4.成果

本研究により的確な試験方法の選定が可能となる知見を得たことで、新たな中小企業からの技術相談や依頼試験に応えることができる。今後、引き続き研究開発を進めるとともに、得られた成果を、地域中小企業と連携を取りながら普及させていく。

設置機器

機器名称 型式・性能 製造所名 設置年月日
損失係数測定装置 スペクトリス(株)ブリュエル・ケアー事業部 H29.1.27

 

事業名 熱・構造特性評価技術の開発
担当 システム技術部
補助事業名 公設工業試験研究所等における人材育成等補助事業〈(公財)JKA〉

1.目的

製品設計の難しさに反して、樹脂製品の製造は容易であり、コストの有利な海外に製造が移る傾向にある。そのため、中小企業といえども、自らが製品設計能力を身につける必要がある。樹脂製品の高精度解析技術を確立して中小企業に普及すれば、様々な温度環境下を想定した製品設計が可能となる。本研究では樹脂製品の開発が効率的にできるように、熱解析・構造解析の技術開発を行う。また、解析に必要となる物性値を測定する手法の開発を併せて行う。それらの開発した技術を当地域に普及させ、メーカーの製品設計の能力を高めることによって、下請け型企業から製品設計段階から関与することができる提案型企業への転換を図り、競争力を向上させることを目的とする。

2.内容

樹脂材料試験では変形と温度の同時計測の事例はほとんど無い。しかし、樹脂の変形は温度依存性が高いため、同時計測は高精度な構造解析をする上で非に有効である。本研究では、DIC(デジタル画像相関法)とサーモグラフィを同期させて測定する手法を開発した。また、熱解析では熱伝導率が重要な物性値であることから、高精度な熱流センサ(DENSO製RAFESPA)を利用して、定常法で熱伝導率を測定する手法を開発した。従来型のセンサに比べて薄型高精度という特徴を利用して、熱漏れの少ない測定が可能になりより高精度な測定が可能になった。

これらの物性値を入力して、熱と構造を連成させた解析をオープンソースで行った。このとき定型化できる解析内容はテンプレートを作成して解析を可能にした。

3.考察

変形と温度の同時測定は測定対象によって従来にない基礎的な物性を取得することができるようになり、解析を行う上で非常に有用であった。しかし、現段階では温度範囲を自在に変化させられるわけではないので、測定範囲の拡大が今後の課題である。熱伝導率測定においては、測定治具を小型化し(表面積はおよそ30%に減少)、熱伝導が一次元的になるような配置にできた。その結果、熱漏れが1%以下での測定が可能となった。なお、熱伝導が悪い材料の場合でも3%程度におさまっている。

解析は市販ソフトの他にオープンソースを利用した。オープンソースはカスタマイズが可能であるため、連成解析を行うときは目的に応じて計算手法を使いわけることができ有効であった。

4.成果

本研究で開発した熱伝導率の測定方法を利用して放熱シートなどを中心とした測定を行っている。測定時間が短くなり、再現性がよいため今後の利用が期待できる。また、測定結果を入力値として、製品開発時における解析が比較的容易に行えるようになった。一例として、金型の温度分布を計算し、さらにそれを入力値として熱変形の解析を行った。この連成解析によって、変形量が基準を超えないか予測できると同時に、温度分布の様子から改善の方向性を考えることができる。また、オープンソースを利用して作成したテンプレートはメーカーの技術者が設計に活用している。

 

研究題目 振動特性評価技術の開発 (1/2)
研究区分 重点
研究者 (システム技術部)〇山田博行、山内健慈、奥田崇之、足立廣正、奥村陽三、間瀬剛、谷口智、林幸裕
研究概要 重点事業のとおり

 

研究題目 熱・構造特性評価技術の開発 (1/1)
研究区分 重点
研究者 (システム技術部)〇梶田欣、村田真伸、斎藤直希、近藤光一郎
研究概要 重点事業のとおり

 

研究題目 次世代環境材料の研究開発 (2/3)
研究区分 重点
研究者 (材料技術部)○小野さとみ、木下武彦、野々部恵美子、岸川允幸、浅野成宏、川瀬聡、柴田信行、林朋子
研究概要 1.目的

本事業では、化学工業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、窯業・土石製品製造業など様々な業界における中小企業の技術支援に繋がるテーマとして、光触媒や吸水ゲルといった次世代環境材料に関する研究開発を行い、防汚・水浄化技術や有価金属の資源回収技術の確立をめざす。

2.内容

可視光応答型光触媒粉体の開発では、従来法に比べて3倍以上高い性能を示す酸化タングステン光触媒を合成した。酸化チタン合成粉体とセメントを配合したバインダーを用いて、コンクリート基材表面に防汚性能と水浄化性能の発現を可能とした光触媒コート技術を確立した。

3.考察

酸化タングステン光触媒の開発では、さらに性能を向上させ、室内での利用を目的としたコート技術の開発をめざす。酸化チタン光触媒コートでは、水浄化性能とともに防汚性能を生かした用途開発をめざす。

 

研究題目 高性能皮膜の作製と応用技術開発 (3/3)
研究区分 重点
研究者 (材料技術部)○加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀、大橋芳明、橋井光弥、毛利猛、岡東寿明、高橋鉱次

(システム技術部)山田隆志

(プロジェクト推進室)八木橋信

1.目的

クロメート皮膜は亜鉛めっきの後処理皮膜として広く利用されてきたが、6価クロムの有害性が問題になってからは建築材料以外での利用が縮小している。代替技術として3価クロメートが開発され広く普及しているが、簡易な分析方法がないことや3価クロメート液に含まれるコバルト塩が新たに規制対象になったことからクロムフリーの後処理の開発が求められている。クロムフリーにはタングステン系などが検討されているが、薬剤コストが高いことや耐食性が十分でないなどの問題がある。本研究ではアルミニウム系、マンガン系、錫系および亜鉛系を主とした複合酸化皮膜の作製技術を確立してクロムフリー防錆皮膜への応用を図る。またこれらの酸化皮膜は光触媒、太陽電池、熱電素子としての機能を有するものがあり、これらの特性を利用した環境技術への応用を目指す。

2.内容

溶融亜鉛アルミ合金が良好な耐食性を示す要因にアルミと亜鉛を含む腐食生成物の形成がある。電気亜鉛めっき上にアルミと亜鉛の複合酸化皮膜を生成させることで、クロメート皮膜の代替となる防錆皮膜を形成できると考えた。酸化膜の形成方法には従来の陽極酸化法を検討するとともに、新たに陰極電解法での複合酸化皮膜の作製条件を検討した。陰極電解法は膜厚の成長速度の制御が容易で平滑で緻密な皮膜を形成できる可能性がある。作製した皮膜の構造は光電子分光測定装置を用いて解析し、表面および深さ方向での酸化物の化学状態および皮膜組成の最適化を図った。電解浴はできるだけ単純にして薬剤コストも安価なものを選定した。塩水噴霧試験によって発生した腐食生成物の化学状態変化も光電子分光装置により測定することで、皮膜の腐食挙動を明らかにして、皮膜作製条件にフィードバックし性能向上を図った。

3.考察

硝酸アルミニウム0.2mol/L、硝酸ナトリウム0.1mol/Lと適量の有機酸塩を添加し、pHを水酸化ナトリウム溶液で3.6±0.2に調整した電解液を用いた。鋼板に膜厚10µmの亜鉛めっき(ジンケート浴)を施したものを陰極にして0.2~0.8A/dm2の電流密度で電解処理することで複合酸化皮膜を作製した。この皮膜は干渉色を呈しており、光電子分光分析によりアルミニウムと亜鉛を含む複合酸化膜を形成していることを確認した。皮膜中の窒素の化学状態はNO2とNO3が混在した状態であり、硝酸の還元反応が皮膜の形成に関与していると考えられる。皮膜の膜厚は電解時間とともに厚膜化し、0.2A/dm2で10分間の陰極電解した場合には皮膜の厚さは400nmであった。この皮膜で耐食性を塩水噴霧試験で評価したところ、48時間まで白錆発生がないことを確認した。耐食性としては光沢クロメートと同程度であるが、十分ではない。走査電子顕微鏡で皮膜の表面を観察したところ、一部に異常析出した部分が確認され、その周囲にクラックが発生していた。このクラックが耐食性を低下の要因と考えられるため、ジルコニウム等の第3元素の添加等による改善を試みた。ジルコニアを含む皮膜について異常析出が若干軽減したものの、大幅な改善には至らなかった。

 

研究題目 有機無機複合材料の高性能化に関する研究 (2/3)
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
研究者 (材料技術部)○名倉あずさ、岡本和明、伊藤清治
(システム技術部)村田真伸、近藤光一郎
研究概要 1.目的

炭素繊維強化樹脂の機械特性向上を目的として、樹脂と炭素繊維の界面密着性の改善を試みる。炭素繊維をプラズマ照射し表面を親水化処理することで、樹脂との親和性を向上させる。

2.内容

炭素繊維の束を薄いシート状に広げてプラズマ照射を行なった。照射前後の繊維の表面の状態をX線光電子分光法で分析した。また繊維のシートに水を滴下し親水性を観察した。さらにフラグメンテーション試験により樹脂と繊維の界面せん断強度を測定し、界面密着性を評価した。

3.考察

プラズマ照射した炭素繊維の表面はカルボキシル基などの親水性基が増加した。また水を滴下すると吸いこまれるように広がり、繊維の親水性が大幅に向上していることがわかった。樹脂と繊維の界面せん断強度は照射前より1.5倍向上したが、繊維強度は変わらなかった。このことは、プラズマ照射によって炭素繊維強化樹脂を高強度化できる可能性を示している。

 

研究題目 低環境負荷材料を用いた高機能表面処理についての研究 (1/3)
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
研究者 (プロジェクト推進室)〇八木橋 信、山口浩一、田中優奈、小島雅彦
(システム技術部)村瀬真
(材料技術部)加藤雅章、松本宏紀、岡東寿明
研究概要 1.目的

エネルギーや資源の高効率化をもたらす表面処理分野において、天然には存在しない化学物質であり生成に大きなエネルギーを要する有機フッ素化合物が使われている。その代替として、汎用元素(炭素やケイ素など地球上に豊富に存在し無害な元素)を用いた高機能な処理の実現を目的とする。

2.内容

ドライプロセスにより、任意の膜厚のシリカ層を形成するための検証実験を行った。また、ゾル・ゲルの手法を応用し、高い動的疎媒性や防食性を持ち、自己再生機能を持つ透明な多層膜からなるハイブリッド防錆皮膜を開発した。

3.考察

ドライプロセスによるシリカ層や有機シランにより修飾された機能性表面の形成は、表面処理技術の低コスト化や低環境負荷に求められる処理である。本年度の検証実験で得られた知見は受託研究や技術指導などを通じて市内中小企業向けに活用された。

 

研究題目 連続向流泡沫分離法による有価金属の分離回収 (2/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
研究者 (材料技術部)〇木下武彦、柴田信行、小野さとみ
研究概要 1.目的

非イオン性界面活性剤PONPEを用いて、PONPEとの相互作用を有するガリウムを対象に、希薄溶液からの選択的分離回収を連続向流泡沫分離法で検討する。各操作因子の分離回収への影響を体系的に把握することを目指す。

2.内容

ガリウム0.03wt%、鉄7.6wt%、亜鉛10wt%を含む亜鉛精錬残渣の塩酸浸出液および10wt%のPONPEを含む塩酸溶液を用いて、本法ならびにPONPEを抽出試薬とした多段溶媒抽出で分離を実施し、各溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置にて測定し、両法の分離性能を比較した。

3.考察

本法は単段で、多種・高濃度の夾雑物を含む浸出液から微量のガリウムを高純度濃縮液として完全回収した。一方、多段溶媒抽出ではガリウム回収率72%、主夾雑物である鉄との分離度は本法の1/10以下、また分離に要するPONPE濃度も本法の500倍以上と、本法の明確な優位性が示された。

 

研究題目 電気化学デバイスの開発と応用 (2/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
研究者 (プロジェクト推進室)〇宮田康史、小島雅彦
研究概要 1.目的

電気化学デバイスは燃料電池や二次電池、廃液処理など様々な分野で応用が期待されている。本研究では、環境浄化に応用する新しい電気化学デバイスとして、微生物電極の検討や微生物活性の高い電極材料の探索を行った。

2.内容

名古屋大学が発見した有機物分解や脱窒素を行う微生物に注目し、土壌から作製した電極上で培養し有機物の分解活性を調べた。活性に関与している電極成分のうち金属元素を同定するためにシンクロトロン光の硬X線を利用した。また、炭素材料の微生物電極への応用において特異なナノ構造を持つ材料が微生物活性を向上させることがわかった。

3.考察

シンクロトロン光の解析により有機物を分解する微生物の活性には電極中の鉄化合物が関与していることがわかった。今後は電極中にある有機物の関与を調査するとともに、電極化する土壌の処理法と活性の関連を調べる。また、炭素材料の開発は電子伝導性や有機物親和性に優れているので微生物活性向上に効果があったと推察される。今後はこれらの特性を活かした応用技術として炭素材料に特異な電気化学特性を付与し機能化を目指す。

 

研究題目 テラヘルツ波の産業応用に関する研究 (2/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
研究者 (電子技術研究室)〇村瀬真、月東充
(プロジェクト推進室)宮田康史
(支援総括室)竹内 満
研究概要 1.目的

テラヘルツ波は、電波と光の中間領域にあり、さまざまな分野への応用が期待される興味深い電磁波である。本研究では、テラヘルツ波の透過性を利用したプラスチック製品の非破壊検査への応用を目指し、測定系やデータ処理技術を検討する。

2.内容

X線CT(Computed Tomography)では、投影データから断面像の変換に、一般にフィルタ補正逆投影法が用いられるが、テラヘルツ波CTではX線と性質が異なるため、この方法では課題がある。特殊な補正処理を組み込みやすい逐次近似法を用いて、データの処理方法を検討した。

3.考察

テラヘルツ波CTでは、試料透過時の屈折などが問題となるが、測定試料と投影角度によっては、これらの影響が比較的少ないデータを取得できる。断面像への変換に必要な一連の投影データから、このようなデータを抽出し用いることで、内部欠陥を確認しやすくなることを示唆した。

 

研究題目 次世代電子機器の実装技術に関する研究 (1/1)
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
研究者 (システム技術部)〇月東充、高橋文明、小田 究、白川輝幸、梶田 欣、岩間由希、近藤光一郎、高橋文明
(支援総括室)伊藤治彦、竹内 満
研究概要 1.目的

次世代電子機器の高信頼性設計技術の確立を目指し、(1) 高速伝送路の信号品質改善と電磁ノイズ低減に関する研究、(2) 電子機器の熱問題を解決するためのシミュレーション技術の開発に取り組んだ。

2.内容

(1) 近傍磁界についてマイクロストリップ線路(MSL)とストリップ線路(SL)とで比較特性評価の測定を行い、予見した結果が得られた。シミュレーションも特性が一致した。

(2) トロイダルコイルを放熱シートを介して放熱ブロックに取り付け冷却させる実験と解析を行った。また、様々な種類の放熱シートの特性を調べた。

3.考察

(1) 近傍磁界については、測定対象の基板を含めた測定系およびシミュレーションの信頼性が確認できた。

(2) コイルの放熱シートへの沈み込み量、コイルの熱伝導率が温度変化に大きく影響していることを確認した。またほとんどの放熱シートで、非定常法よりも定常法で測定した方が熱伝導率が大きく、この原因が不明確で今後の検討課題である。

 

研究題目 シンクロトロン光を利用した亜鉛めっきおよびクロメート皮膜の構造・状態解析 (3/3)
研究区分 共同(愛知県鍍金工業組合)
研究者 (材料技術部)〇加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀
研究概要 1.目的

あいちシンクロトロン光センターの開設によりシンクロトロン光(SR光)を身近に利用できる環境が整備された。本研究はSR光実験によりめっき皮膜の構造や皮膜成分の化学状態を調べることでめっき技術の高度化を図ることを目的とする。

2.内容

ニッケルめっきには硫黄系添加剤が使用され、硫黄が取り込まれることで外観や耐食性が大きく変化する。ニッケルめっき中の硫黄は100ppm程度で通常の測定機器ではその化学状態を調べることは困難である。本年度は、軟X線のXAFS法(BL6N1)を利用して、ニッケルめっき皮膜中の硫黄の化学状態を分析した。

3.考察

ニッケルめっきの硫黄K吸収端の XAFS測定により、無光沢ニッケルでは主に硫酸根として、光沢ニッケルではニッケル金属に硫黄が固溶した状態で取り込まれていることが分かった。この硫黄は、添加剤のサッカリンナトリウムが電気分解して生成したと考えられる。

 

研究題目 難接合材料の接合技術に関する研究 (1/1)
研究区分 共同((一社)愛知県溶接協会)
研究者 (材料技術部)〇毛利猛、岡東寿明、松井則男
研究概要 1.目的

アルミニウム合金やチタン合金、ステンレス鋼、高張力鋼などでは、同種材料でも異種材料でも接合時に特に注意が必要で、難接合材料に分類される。難接合材料では、十分な強度やじん性などを持つ健全な接合とするためには多くのノウハウが必要である。そこで、難接合材料の同種接合または異材接合のデータを集積することを目的とする。

2.内容

(1)厚さ1.4mmの980MPa級高張力鋼板に対し、溶加材を加えたレーザ溶接によりビードオン試験を行い、最適条件とそれよりも入熱量の大きい比較条件の突き合わせ溶接材を評価した。

(2)厚さ1mmのAl合金板(A5052)と冷間圧延鋼板(SPCC)を重ね、A5052側より直径3mm長さ1mmのSKD61製ピンを回転させながら押し込み、摩擦接合を行った。

3.考察

(1)溶加材を加えることにより、アンダーカット等の欠陥のない溶接結果が得られた。突き合わせ溶接材の引張試験では、最適条件では母材で破断、比較条件では熱影響部で破断した。

(2)点接合では引張荷重のばらつきが大きく十分な荷重を示さなかったが、6㎜移動摩擦接合材は同じ板厚のスポット溶接材と同程度のせん断引張荷重を示した。

 

研究題目 電子機器の信頼性評価技術の開発 (1/1)
研究区分 指定
研究者 (システム技術部)〇梶田欣、井谷久博、岩間由希、村瀬真、立松昌
研究概要 1.目的

電子部品の信頼性評価にはヒートサイクル試験が用いられる。この試験では部品の温度が一様な状態で温度の上下が繰り返されるため、実際の使用状態のように温度部品内で温度分布をもたない。そのため、実際の使用とは状況が異なる。本研究では電子部品にオン、オフを繰り返して部品内に温度分布をもたせた状態をつくり、信頼性評価試験への適用を検討した。

2.内容

電子部品(FETやIGBT)のボディダイオードモードを使いオン、オフを繰り返す試験を行った(パワーサイクル試験)。また、試験の途中で過渡熱測定を行い、部品内の熱抵抗変化を調べた。その劣化の状態をヒートサイクル試験と比較した。

3.考察

ヒートサイクル試験ではジャンクション下のはんだ部分が劣化をしたが、パワーサイクル試験ではワイヤーボンディングが剥がれるという結果がでた。パワーサイクル試験は実際の使用状態に近い加速試験とも考えられ、試験期間の短期化を図ることができ、有用であると考える。

 

研究題目 磁気測定精度向上のための消磁技術の確立 (1/1)
研究区分 指定
研究者 (システム技術部)〇小田究、間瀬剛
(プロジェクト推進室)宮田康史
研究概要 1.目的

磁気測定の精度(信頼性)向上を目指して、初期磁化特性を含む磁化特性の測定で課題の一つとなっている供試体への簡便かつ確実な消磁を施すための技術を検討した。

2.内容

供試体の性状や特性ごとに消磁作業の類型化や簡便化の検討を行った。特に、同一材質の軟質磁性材について閉磁路状と開磁路状で供試される場合での消磁作業の信頼性について定量的な評価を行った。

3.考察

主に軟質磁性材の無着磁状態を出発とする初期磁化特性を得る際の測定の信頼性を定量的に確認することができた。開磁路状で供試される場合については、機構部品や磁気応用製品の帯磁防止の対策の有効性確認と同様、実用上の観点からの要因に関しても定量評価と考察を要する。

 

研究題目 プロダクトデザインのための評価手法の研究 (1/1)
研究区分 萌芽
研究者 (システム技術部) 〇岩間由希、松下聖一、真鍋孝顕、立松昌
研究概要 1.目的

デザイン・ヘルスケア分野での製品特性や効果の評価においては、人の感じ方や快適性などを総合的に評価するのは難しく、経験や勘など主観的判断に頼っている場合が多い。そのため、それらを工学的側面から簡便な手法で測定・可視化する技術の開発を目的とした。

2.内容

工業用途の装置やセンサを用いて、人と接触して使用される器具についての、形状や伝熱などの測定手法への応用を検討した。一般機器を測定する際との相違点や注意事項などの知見を得るとともに、測定結果と被験者の受ける感性についても相関の有無や理由について検討した。

3.考察

3D造形機で製作した実物モデルを用いることで、補助具としての有用性評価を実施できた。また、人体計測におけるフレキシブルセンサや補助材料活用の有効性が認められた。熱測定では、熱流による評価手法を検討したところ、摩擦熱など微細で急激な熱流変化を捉えることができた。

 

研究題目 射出成形品中の不連続繊維の挙動に関する研究 (1/1)
研究区分 萌芽
研究者 (システム技術部) 〇近藤光一郎、村田真伸
(材料技術部) 伊藤清治、名倉あずさ
研究概要 1.目的

不連続繊維強化樹脂の材料特性は繊維含有率や繊維長と密接な関係にあることが知られている 。しかし、繊維含有率や繊維長のバラツキが機械的性質に与える影響について調べた報告は少ない。本研究では実際の成形品中における繊維含有率のバラツキを測定し、バラツキがヤング率に与える影響を明らかにすることを目的とした。

2.内容

樹脂流入口及び流動端末を含めた平板形状4か所の繊維含有率を測定した。測定結果から流動端末の繊維含有率は他の箇所に比べて約3wt%高いことが確認できた。次に繊維含有率のバラツキがヤング率に与える影響をCAEから予測した結果、ヤング率は最大約10%異なることが分かった。

3.考察

平板形状の流動端末は他の部分に比べ約3wt%繊維が多く含まれていることが分かった。そこで平板形状以外の繊維含有率も調査した結果、必ずしも流動端末に3wt%のバラツキが生じているわけではない。従って、繊維含有率のバラツキは流動挙動や成形形状に依存していると考えられた。

 

研究題目 新規防汚性表面改質剤の開発 (1/1)
研究区分 萌芽
研究者 (材料技術部)〇 山中基資、小田三都郎、石垣友三
研究概要 1.目的

現在、各種機器や製品などにおいてメンテナンスフリーであることが求められている。特に自動車や建築物などでは、維持管理コストが大きくなるため、外観を長期間良好な状態に保つことが重要となる。そこで本研究では、様々な製品表面を長期間良好に保持できるような表面改質剤の開発を目的とする。

2.内容

本研究では上記目的達成のため、有機-無機ハイブリッド型の表面改質剤を合成した。得られた改質剤から薄膜化条件を検討した。得られた薄膜の水および油(n-ヘキサデカン)に対する接触角および滑落角を測定し、その防汚特性を評価した。

3.考察

反応条件を適切に調整することで有機-無機ハイブリッド型の表面改質剤を合成できた。得られた改質剤から、ゾル-ゲル法の条件を検討することで、透明な薄膜を作製することができた。得られた薄膜の接触角測定からは、水および油に対して高い接触角、低い滑落角を示し、撥液性の防汚特性を有していた。今後は改質剤の純度向上と薄膜化条件の最適化、薄膜の耐久性確認などが課題である。

 

研究題目 CFRPの損傷に関する研究 (1/1)
研究区分 萌芽
研究者 (システム技術部) 〇深谷聡、二村道也、児島澄人、丹羽淳
研究概要 1.目的

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は将来多くの需要が見込まれる素材であるが、破壊の兆候を事前に見出す方法がまだ確立されていない。そこで本研究では、CFRPの破壊前の損傷形態(兆候)に関する実験と考察を行い、損傷形態と破壊との関係を見出すことを目的とする。

2.内容

本研究では引張り負荷が加わった場合と衝撃負荷が加わった場合についてCFRPの損傷形態を浸透探傷試験及び超音波探傷試験を用いて観察した。浸透探傷試験では目視で観察が困難な表面クラックを破壊部近傍で確認でき、超音波探傷試験では衝撃部直下の内部損傷(層間はく離)を捉えることができた。

3.考察

繰り返し引張り負荷と衝撃負荷ではその損傷形態は異なるが、適切な非破壊試験を行うことでその予兆を捉えることができると考えられる。非破壊試験法を組み合わせて適用することでCFRP表面から内部に至るまでの検査ができ、多くの信頼性評価につながることが期待できる。