研究報告

平成27年度研究報告

重点事業 (2テーマ)

事業名 次世代環境材料の研究開発
担当 材料技術部
補助事業名 公設工業試験研究所等における機械設備拡充補助事業〈(公財)JKA〉

1.目的

本事業では、化学工業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、窯業・土石製品製造業など様々な業界における中小企業の技術支援に繋がるテーマとして、光触媒や吸水ゲルといった次世代環境材料に関する研究開発を行い、人々の生活空間の中で重要な環境要素の一つとなる防汚・水浄化技術、ならびに、限りある資源の有効活用に繋がる有価金属の資源回収技術の確立をめざす。

2.内容

光触媒を用いた研究開発では、可視光応答型光触媒である酸化タングステンと紫外光応答型光触媒である酸化チタンを用いて防汚や水浄化性能の発現を可能とする光触媒コート技術を開発する。酸化タングステンでは、結晶性の制御された粉体の合成法を検討するとともに、光触媒活性の向上に役立つ助触媒について調べる。酸化チタンでは、安価な化学溶液法により結晶性の制御された酸化チタン粉体を合成する。一方、吸水ゲルを用いた有価金属回収の研究開発では、主として自動車で使用される白金族元素を含有する触媒などを対象とし、含窒素吸水ゲルを用いた選択的な有価金属回収技術を開発する。

3.考察

光触媒および吸水ゲルの研究開発で得られた成果により当所独自の技術シーズを構築し、外部資金の獲得を目的とした提案公募型事業への提案を通して、当地域の中小企業へ技術移転することをめざす。それにより、中小企業の「ものづくり」におけるオンリーワン技術の創出に貢献する。一方、設置機器であるX線回折装置を活用した材料評価技術による技術相談、依頼試験および受託研究などの日常業務を通して、中小企業への技術支援を強化する。

設置機器

機器名称 型式・性能 製造所名 設置年月日
X線回折装置 Empyrean スペクトリス(株)パナリティカル事業部 H27.12.15

 

事業名 次世代材料の評価技術の高度化
担当 システム技術部
補助事業名 公設工業試験研究所等における人材育成等補助事業〈(公財)JKA〉

1.目的

炭素繊維強化プラスチック(以下CFRP)は世界市場の約7割を日本メーカーが製造しており、新素材として航空機産業、自動車産業、レジャー・スポーツ用品等のものづくり分野に普及してきている。CFRPの使用の増加に伴いその品質管理が重要視されてきている。例えば、CFRP製品の不良確認を行うには非破壊検査が大きな役割を果たしており、現在のところ超音波探傷試験や軟X線透過試験が主に用いられている。しかし、これらの方法はCFRP内部欠陥の検出には優れているもののCFRP表面欠陥の検出が困難であったり、試験器が高価かつ安全性の確保が煩雑という短所を有している。そこで本研究はCFRPの表面から内部に至るまでの欠陥を、迅速かつ簡便に検出する手法の検討を行うことを目的とする。

2.内容

本研究は平織りプレプレグからCFRP積層板を作製し、そこから切り出した試験片に繰り返し引張り負荷を加えることでマトリックスクラックと呼ばれる欠陥を作製し、マトリックスクラックを非破壊で検出する手法を検討した。このマトリックスクラックは目視試験では観察が困難な欠陥である。そのため表面欠陥の検出については浸透探傷試験を、内部欠陥の検出については本事業で導入した超音波探傷器を用い、欠陥の検出が可能であるか実験を行った。

3.考察

繰り返し引張り荷重を加えたCFRP試験片の表面に浸透探傷試験を適用したところ、応力集中部周辺にマトリックスクラックが発生していることが確認できた。特に、マトリックスクラックの中でスプリッティングと呼ばれる引張り荷重方向と平行方向のクラックや、トランスバースクラックと呼ばれる引張り荷重方向と垂直方向のクラックが顕著に確認できた。一方で、クラックが生じた試験片に超音波探傷試験を行ったところ、内部欠陥と思われるエコーを確認することができなかった。そこで、CFRP積層板内に層間剥離の疑似欠陥としてテフロンを挟み込んだ試験片を別に作製し超音波探傷試験を実施したところ、テフロンからと思われる超音波エコーをキャッチすることができ、超音波探傷試験結果を精査することによりCFRPの破壊の主たる要因と言われている層間剥離等の内部欠陥を検出できる可能性があることが分かった。
また、本事業で導入された超音波探傷器の有用性を確認するとともに講習会等を通じて中小企業への支援に活かすことができた。超音波探傷器を活用した研修及び非破壊検査に関する技術普及講習会を各2回実施し、研修については計20名、技術普及講習会については計83名の参加があった。自動車等関連企業や金属及び樹脂関連企業をはじめ、当地域における幅広い業種の中小企業が参加され講習会及び研修に関する企業の満足度も高かった。

設置機器

機器名称 型式・性能 製造所名 設置年月日
超音波探傷器 Phasor XS 16/64 GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社 H27.11.27

重点研究、共同研究、指定研究および萌芽研究

研究題目 次世代環境材料の研究開発 (1/3)
研究区分 重点
指定分野 環境対応技術
研究概要 重点事業のとおり

 

研究題目 次世代材料の評価技術の高度化 (1/1)
研究区分 重点
指定分野 機能性・軽量部素材
研究概要 重点事業のとおり

 

研究題目 高性能皮膜の作製と応用技術開発 (2/3)
研究区分 重点
指定分野 機能性・軽量部素材、環境対応技術
研究者 (材料技術部)○加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀、大橋芳明、橋井光弥、毛利 猛、岡東寿明、山田隆志、髙橋鉱次
(プロジェクト推進室)  八木橋信
研究概要 1.目的

クロメート皮膜は亜鉛めっきの後処理として有用であるが、6価クロムの有害性の問題からクロムフリー後処理の開発が求められている。本研究ではアルミニウム系、錫系、マンガン系および亜鉛系を主とした複合酸化皮膜の作製技術を確立してクロムフリー防錆皮膜への応用を図る。

2.内容

強固な酸化皮膜の形成が期待できるアルミニウム系複合酸化皮膜を作製する手法を検討した。表面組成や化学結合状態を光電子分光により評価するとともにその耐食性を調べた。

3.考察

硝酸アルミニウムを主成分とする電解液を用いて亜鉛めっきを陰極にして電解処理することで干渉色を有する皮膜が作製できた。アルミニウムと亜鉛を含む複合酸化膜を形成しており、0.2A/dm2で10分間電解すると皮膜厚さは400nmとなった。塩水噴霧試験により48時間まで白錆発生しないことを確認した。クロメート代替としてはまだ不十分な値であるが、改良していく余地があると考えられる。

 

研究題目 高機能性プラスチック材料の開発 (3/3)
研究区分 重点
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料技術部)○石垣友三、小田三都郎、高木康雄、林英樹、山中基資、村瀬由明、高橋欽次
1.目的

本事業では、特殊な機能や高性能を有する高機能性プラスチック材料を開発するとともに、それに必要な分子の構造や配列と材料の性能との相関についての知見を蓄積し、この手法を用いて得られたプラスチック材料開発のノウハウを、当地域の中小企業へ提供することにより製品開発の一助となることを目的とする。

2.内容

ポリ乳酸の射出成形性を向上させる目的で、結晶化を促進する結晶核剤を合成した。固体NMRのφ4 mmロータの形状に合わせて作製した金型を用いて、樹脂温度200℃、金型温度110℃(結晶核剤無添加の場合は室温)とし、結晶核剤の添加量を10, 1, 0.5, 0.1 phrと変化させて、ポリ乳酸の固体NMR測定用試料を成形した。得られた試料の13CCPMAS測定、プロトンスピン格子緩和測定(T1H)を行い、結晶性等のモルフォロジーに関わる知見を得るとともに、最適な結晶核剤の添加量を決定した。

3.考察

結晶核剤を10, 1, 0.5, 0.1 phr添加したPLAの射出成形のサイクルタイムはそれぞれ45, 60, 120, 240秒と、添加量が多いほど短時間であった。成形体サンプルの13CCPMAS測定において、各炭素のシグナルは結晶核剤未添加のものでは幅広い単一のピークとして観測されただけなのに対し、添加PLAでは結晶による鋭いピークと非晶の幅広いピークが重なって観測された。10 phrと1 phr添加のものでは結晶由来のピークに有意差はなかったが、0.5 phr添加のものでは若干鋭さが低下し、0.1 phr のものではわずかに観測されるにとどまった。この結果から、結晶核剤の添加量は1 phrが妥当と判断された。T1H測定では、スピン拡散によるT1Hの一致は観測されず、PLAと結晶核剤が独立した緩和挙動を示したことから、結晶核剤がPLA中でスピン拡散が及ぶ距離(20   50 nm)よりも大きなサイズのドメインを形成していると推察された。このことは結晶核剤がPLAと完全相溶ではなく、ある程度のサイズでPLA中に存在し、結晶化を促進することを示唆している。
以上、固体NMRのスペクトルや緩和時間測定による評価が成形材料の開発に寄与できることをPLA用の結晶核剤の評価により示すことができた。

 

研究題目 有機無機複合材料の高性能化に関する研究 (1/3)
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料技術部)○名倉あずさ、岡本和明、原田 征
(システム技術部)村田真伸、近藤光一郎
(プロジェクト推進室)小島雅彦
研究概要 1.目的

ラマン分光法により炭素繊維と樹脂の界面せん断強度を測定する手法を確立する。繊維と樹脂の界面接着強度を評価し、有機無機複合材料の機械特性向上につながる表面改質技術や成形加工法を探索する。

2.内容

炭素繊維のフィラメントを埋め込んだ樹脂に一定量のひずみを与え、繊維にかかる応力の分布をラマン分光法で測定した。数値微分を行ない、その最大値から界面せん断強度を求めた。値の信頼性を確認するため、従来使われているフラグメンテーション法で測定した結果と比較した。

3.考察

ラマン分光法とフラグメンテーション法で測定した界面せん断強度は定性的に一致し、ラマン分光法による界面接着強度の評価が可能であることを確認した。また熱硬化性樹脂は硬化温度によって炭素繊維との界面せん断強度が異なることを見出した。

 

研究題目 ナノ・マイクロ領域のマルチスケール表面処理技術に関する研究 (3/3)
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (プロジェクト推進室)○八木橋信、山口浩一、田中優奈、小島雅彦
(システム技術部)村瀬真
(材料技術部)加藤雅章、松本宏紀
研究概要 1.目的

従来から進めてきたナノメートル領域の表面処理技術とマイクロメートルオーダーの微細な凹凸を組み合わせたナノ・マイクロ領域のマルチスケールな表面処理技術に関する研究を進め、水や油に対する高い疎媒性や親媒性を実現し、機械部品や医療等への活用を目指す。

2.内容

実用的な疎媒性や親媒性表面を得るため、自己組織化の特性を活用したナノ・マイクロ領域のマルチスケールな表面処理を開発した。また、外部競争的資金により、創生した表面のぬれ性を評価するため、術者によらず安定して動的接触角を測定する装置を開発した。

3.考察

シリカ前駆体や機能性官能基などを組み合わせることで、水やさまざまな油に対する高い滑落性を示す表面を製作し、さらに高温(250℃)に加熱しても特性が損なわれないことを確認した。これら研究で得られた知見は技術指導などを通じて市内中小企業向けに活用された。

 

研究題目 連続向流泡沫分離法による有価金属の分離回収 (1/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
指定分野 環境対応技術
研究者 (プロジェクト推進室)○木下武彦、柴田信行、小野さとみ
研究概要 1.目的

非イオン性界面活性剤PONPEを用いて、PONPEとの相互作用を有するガリウムを対象に、希薄溶液からの選択的分離回収を連続向流泡沫分離法で検討する。各操作因子の分離回収への影響を体系的に把握することを目指す。

2.内容

ガリウム、鉄、亜鉛、銅、各20ppmの塩酸溶液と10wt%のPONPEを含む塩酸溶液を用いて、当方および従来の泡沫分離法で分離を実施し、各溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置にて測定した。

3.考察

本法では、ガリウムの完全回収を達成し、また従来法と比して、ガリウムと夾雑金属との分離度は2~3桁の向上を示した。泡沫相への金属溶液の直接滴下に伴い、泡沫と下方流の連続的な向流接触による泡沫表面への吸着が実現できるため、本法は高い分離性能を示す。

 

研究題目 電気化学デバイスの開発と応用 (1/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
指定分野 環境対応技術
研究者 (材料技術部)○宮田康史
研究概要 1.目的

電気化学デバイスは燃料電池や二次電池、廃液処理など様々な分野で応用が期待されている。微生物を環境浄化に応用するために微生物電極の検討を行った。電極組成の調査と電気化学評価技術の確立を目的とした。さらに微生物活性の高い電極材料の探索として炭素材料の検討を行った。応用技術として白金触媒に近い電気化学特性を有する非白金材料として炭素に注目して開発を始めた。

2.内容

名古屋大学が発見した有機物分解や脱窒素を行う微生物に注目し、電極化して分解活性を調べた。活性の確認された電極について分光測定を行い組成分析から活性因子の同定を始めた。分光測定にはシンクロトロン光の硬X線も利用した。微生物電極の電気化学特性を行い、分解反応である酸化還元反応の電位依存性を把握した。また、炭素材料の微生物電極への応用において特異なナノ構造を持つ材料が微生物活性を向上させることがわかった。

3.考察

微生物が生息する土壌に化学的処理を施した電極が微生物活性を有する場合があることがわかった。今後は処理法と活性の関連を調べるため分光測定を継続する。特に硬X線分光では無機物の高度分析が可能であるため活性支配因子の解明が期待できる。また、ナノ構造炭素は電子伝導性や有機物親和性に優れているので微生物活性向上に効果があったと推察される。今後は酸素還元触媒性能について検討を進める。

 

研究題目 テラヘルツ波の産業応用に関する研究 (1/3)
研究区分 共同(名古屋大学)
指定分野 ICT
研究者 (システム技術部)○村瀬真、竹内満
(プロジェクト推進室)宮田康史
研究概要 1.目的

電波と光の境界の電磁波であるテラヘルツ波は、電波のように透過性を有し、また光のように測定系の構築が可能なため、非破壊検査、製品の品質検査など広範囲な産業応用への展開が期待されている。本研究では、非破壊検査を対象とし、テラヘルツ波の産業応用への可能性を検討する。

2.内容

テラヘルツ波CT(Computed Tomography)は、樹脂などソフトマテリアル製品の内部構造・欠陥を非破壊検査できる技術として注目されるが、拡散や屈折などの影響もあり鮮明な像の取得は容易ではない。このため、デコンボリューションなどの画像処理技術を用い、画質の改善を検討した。

3.考察

画像処理技術を用いることで、画像のエッジ部などに改善がみられた。しかし、用いるデータによって効果の程度が異なり、また、実際の試料寸法との一致にも課題がみられた。今後、データの取得方法、画像再構成方法、異常部の検出方法について検討する。

 

研究題目 次世代電子機器の実装技術に関する研究 (1/1)
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
指定分野 信頼性技術、ICT
研究者 (システム技術部)○竹内満、白川輝幸、小田究、岩間由希、梶田欣
(支援総括室)高橋文明
研究概要 1.目的

次世代電子機器の実装技術の確立を目指し、(1) 高速伝送路の信号品質改善と電磁ノイズ低減に関する研究、(2) 電子機器の熱問題を解決するためのシミュレーション技術の開発に取り組んだ。

2.内容

(1)4層基板による高速差動伝送線路の設計・作製を行い、信号品質・伝送特性・放射電界特性(EMI)の評価を行った。
(2)シミュレーション技術を用いた熱設計の時間短縮を図るため、電源回路で使われているトロイダルコイルについて、発熱実験と併行しながら解析モデルの簡易化の検討を行った。

3.考察

(1)信号品質・伝送特性の評価では、測定周波数5Gbpsまで許容範囲内にあり、デジタル伝送には実用に耐えうる信号品質と伝送特性であった。放射電界測定は最適ビア間隔があることを示唆する結果が得られた。
(2)実測と詳細・簡易モデル間で温度が5℃以内で一致し、解析時間は詳細モデルの約1時間から2 分に短縮できた。また、DC-DC電源回路を作成し、電気的測定から発熱量(損失)を求めた。また、コイル・シート間熱抵抗測定の評価を行った。

 

研究題目 シンクロトロン光を利用した亜鉛めっきおよびクロメート皮膜の構造・状態解析 (2/3)
研究区分 共同(愛知県鍍金工業組合)
指定区分 機能性・軽量部素材、環境対応技術
研究者 (材料技術部)○加藤雅章、三宅猛司、松本宏紀
研究概要 1.目的

欧州発の環境規制により装飾クロムめっきは3価クロムめっきに置き換わりつつある。3価クロムめっきはメーカーごとに色調や特性の違いが問題になっているが、そもそもその構造や成分・化学状態などよくわかっていない。そこでシンクロトロン光を用いた構造解析を行った。

2.内容

2種類(A社とB社)の3価クロムめっきを準備した。光電子分光により組成と化学状態を、あいちシンクロトロン光センターの薄膜X線回折(BL8S1)により結晶構造を解析した。

3.考察

A社は硫黄Sを多量に含有しており(8wt%)、金属状態で存在していると推測される。一方B社は鉄Feを多量に含有し(25wt%)、クロム鉄合金を形成していた。いずれも合金めっきであり、成分も全く異なっており、このため色調や特性に違いが現れたと考えられる。2社ともにめっきしたままではX線回折にブラッグ回折は現れず、アモルファス状態であった。

 

研究題目 難接合材料の接合技術に関する研究 (1/1)
研究区分 共同((一社)愛知県溶接協会)
指定分野 信頼性技術、機能性・軽量部素材、環境対応技術
研究者 (材料技術部)○毛利猛、川尻鉱二、岡東寿明、山田隆志

(システム技術部)松井則男

研究概要 1.目的

アルミニウム合金やチタン合金、ステンレス鋼、高張力鋼などでは、同種材料でも異種材料でも接合時に特に注意が必要で、難接合材料に分類される。難接合材料では、十分な強度やじん性などを持つ健全な接合とするためには多くのノウハウが必要である。そこで、難接合材料の同種接合または異材接合のデータを集積することを目的とし、これから取り組もうとする(一社)愛知県溶接協会の会員企業に情報提供する。

2.内容

(1)厚さ1.4mmの980MPa級高張力鋼板に対し、レーザの走査速度と出力を変化させたビードオン試験により溶接条件を検討した。次に、最適条件とそれよりも入熱量の大きい比較条件で突き合わせ溶接を行った。
(2)厚さ1mmのAl合金板(A5052)と冷間圧延鋼板(SPCC)を重ね、A5052側より直径3mm長さ1mmのSKD61製ピンを回転させながら押し込み、摩擦接合を行った。

3.考察

(1)ビードオン試験では、入熱量が大きいほど溶融部、熱影響部ともに幅が広くなった。突き合わせ溶接材の引張試験では、最適条件では母材で破断、比較条件では熱影響部で破断した。
(2)ピンの回転速度1100rpm、押し込み量1.25mm、保持時間10~60秒の条件で接合可能であった。ピンの押し込み時の回転による摩擦熱でA5052が流動しSPCCと密着・接合したものと考えられる。

 

研究題目 LEDを利用した省電力装置の信頼性評価技術の開発 (2/2)
研究区分 指定
指定分野 信頼性技術
研究者 (システム技術部)○梶田 欣、井谷久博、岩間由希、村瀬 真、立松 昌
研究概要 1.目的

省電力デバイスとしてLEDの使用が増えているが、LEDは発熱密度が大きく熱に弱いという欠点がある。そのため、製品設計が悪いと長期信頼性が確保できないことが多い。これらの問題を解決するためにLEDの適切な評価技術の開発とし、将来的には効率的な放熱手法を検討する。

2.内容

LED等半導体部品の放熱を適切に評価するには発熱源からの熱的な構造を測定し、把握する必要がある。本研究では過渡熱測定から熱構造関数を導き、ジャンクションから大気までの熱抵抗と熱容量で評価した。半導体部品に熱衝撃試験とパワーサイクル試験を行い、それぞれ熱抵抗の変化を測定した。

3.考察

熱衝撃試験ではダイアタッチ部分の熱抵抗が増加し、部品の劣化を過渡熱測定から評価できることがわかった。また、同じ部品に対して、ヒートサイクル試験を行ったところ、内部のワイヤーが断線し故障した。評価方法によって劣化する位置が異なることを確認した。ヒートサイクル試験が実際の使用状況に近い加速試験と考えられ、これらの関係を明確にすることが今後の課題である。

 

研究題目 ハイブリッドCFRPの開発に関する研究 (1/1)
研究区分 萌芽的指定
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料技術部)○名倉あずさ、原田征、岡本和明
(システム技術部)近藤光一郎、二村道也
(支援総括室)伊藤清治
研究概要 1.目的

炭素繊維強化樹脂(CFRP)は比強度・比剛性・衝撃特性に優れた材料といわれるが、射出成形などの加工中に繊維が折損し、機械特性が著しく低下することが知られる。折損しにくい有機繊維を炭素繊維と組み合わせることで、機械特性に優れた射出成形用繊維強化樹脂の作製を目指す。

2.内容

種々の有機繊維を炭素繊維と任意の割合で混合し、ポリプロピレン樹脂と溶融混練して繊維強化樹脂を作製した。これを射出成形により試験片形状に成形し、機械特性の評価を行なった。物性向上に効果のある有機繊維を見出すとともに、繊維の適切な混合比についても検討した。

3.考察

テフロン繊維やポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維はほとんど物性向上効果がなかった。一方、アラミド繊維を用いた場合、弾性率はCFRPと比べてほとんど変わらないが、破断伸びが大きくなり、引張強さや衝撃強さが向上した。またアラミド繊維の含有率が高くなるほどこれらの特性が向上した。

 

研究題目 燃料電池用電極材料に関する研究 (1/1)
研究区分 萌芽的指定
指定分野 環境対応技術
研究者 (プロジェクト推進室)○田中優奈、宮田康史、小島雅彦
(支援総括室)伊藤清治
研究概要 1.目的

微生物燃料電池は、微生物の代謝活動を利用し、下水や食品工場の有機廃水を処理して電力を作る環境に優しい発電方法として注目されているが、実用化には電池の出力向上やコスト低減の課題がある。本研究では、微生物燃料電池の高出力化、低コスト化を目指し、電極材料の開発を行った。

2.内容

グラファイトフェルトに湿式で鉄酸化物を修飾した電極を、微生物燃料電池の負極に用いて性能評価した結果、未修飾の電極より最大出力密度が向上した。また、正極構成部材の触媒バインダーをナフィオンから疎水性高分子ポリマーに代替し、最大出力密度を評価したがわずかに低下した。

3.考察

負極材料に関しては、さらに鉄酸化物の担持量との相関や長期の出力安定性、グラファイトフェルトより安価な材料への鉄酸化物修飾を検討する必要がある。また、正極の触媒バインダーについては、ナフィオンより低価格でイオン導電性に優れた材料を続けて探索する必要がある。

 

研究題目 ヘルスケア・プロダクトデザイン製品の人体影響評価 (1/1)
研究区分 萌芽的指定
指定分野 環境対応技術
研究者 (システム技術部)○岩間由希、真鍋孝顯、松下聖一、近藤光一郎、立松昌
(支援総括室)伊藤清治
研究概要 1.目的

近年は、福祉・介護・健康増進機器やデザイン性の高い製品など、人体・感性に直接関わる分野の重要性が増してきている。それらの観点を重視した製品開発を効果的に支援するために、基礎的データの取得や、より感性に近い測定手法について探索することを目的とする。

2.内容

従来の、工業製品を主対象とした測定・評価では大きく不足していた、人体感覚に関するデータ・知見の蓄積のため、主に人体部位の形状や圧力・温度分布等を測定した。また、複数の測定手法を組み合わせることによって、高精度化や、評価をより感性に近づける方法についても検討した。

3.考察

主に手指の把持動作を検討対象とし、体圧分散測定器・感圧紙・圧力センサ等を用いて手指に加わる力の分布などを測定した。測定時の補助材料の工夫や、圧力最大値のみでなく時間変化による検討も加えるなど、評価手法の高度化・多角化を図った。それらにより、持ちやすいと被験者が感じる場合の測定値の傾向や、正確性向上のための重要事項などが示唆された。

 

研究題目 環境浄化を目的とした新規高性能炭素複合酸化チタン光触媒の開発 (1/1)
研究区分 萌芽的指定
指定分野 環境対応技術
研究者 (材料技術部)○川瀬聡、林朋子、小野さとみ
研究概要 1.目的

近年、様々な環境問題への取り組みが重要性を増している。水質浄化の分野において、薬剤等を使用しない水処理方法として光触媒技術が注目されており、水質浄化のための高性能光触媒材料が求められている。そこで、本研究では新規高性能酸化チタン光触媒の簡易かつ安価な合成法を確立することを目的とする。

2.内容

これまでの研究において、ゾルゲル法で合成した酸化チタンに炭素を複合化することにより、光触媒性能が向上することが分かった。本研究では酸化チタン粉体の合成時における加水分解条件及び炭素の複合化手順等を検討し、光触媒性能の向上を図った。その結果、活性炭を複合化することにより光触媒性能がおよそ1.4倍に向上した。

3.考察

活性炭の吸着能との相乗効果により、光触媒性能を向上させることができた。また、簡易かつ安価な合成法で一定の性能を有する酸化チタン粉体が作製できた。

 

研究題目 金型離型性向上のためのコーティング技術開発 (1/1)
研究区分 萌芽的指定
指定分野 機能性・軽量部素材、環境対応技術
研究者 (材料技術部)○岡東寿明、三宅猛司、山中基資
(システム技術部)二村道也
研究概要 1.目的

樹脂成形の中でも特に柔らかいゴムやウレタン等は離型時に樹脂が金型へ付着することがある。これを防ぐために離型剤を塗布するが、コストや作業環境の面からできればその作業を無くしたいのが実情である。そこで本研究では、繰り返し離型可能かつある程度耐久性をもったコーティング技術の開発を目的とする。

2.内容

本研究では金属アルコキシドを出発原料に、ゾルゲル法によるコーティング技術の開発を目指した。テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドをアルコール等に溶解し、酸を触媒として前駆体溶液を作製した。その後金属基板上に塗布・熱処理することでコーティング膜を成膜した。出発物質のアルコキシドに有機官能基を有するシランを加えることで、離型効果を得た。

3.考察

コーティングの耐久性向上のためにシラン以外の金属アルコキシドを混合した前駆体を検討したが、前駆体溶液の調製や均質なコーティングが難しく、膜と呼べるような状態にはならなかった。シラン類のみを用いた場合も特に高い離型効果を期待できるフルオロアルキルシラン等では均一な成膜が困難であり、溶媒の検討や金属基板の前処理によって作製を可能とした。得られたコーティング膜は実際に発泡ウレタンを繰り返し付着・剥離する試験により離型効果が確認された。