研究報告

平成23年度研究報告

重点事業 (1テーマ)

事業名 電子制御機器の設計効率化の研究
指定分野 CAE
担当 [電子情報部]:梶田欣、高橋文明、近藤光一郎、岩間由希、八木橋信、村瀬真、月東充、白川輝幸、宮田康史、小田究、竹内満、粟生雅人
補助事業名 公設工業試験研究所の設備拡充補助事業〈(財)JKA〉

1.目的

近年の工業製品は大多数が電子制御化されている。使用する電子機器には高い信頼性が要求されるが、小型・高速化が進むに従い、熱と電磁ノイズの問題が大きくなってきた。しかし、これらの対策は相反する面があるため、両立した設計が難しい。これまでに熱設計に関する多数の技術相談を行ったが、熱対策だけに偏ると電磁ノイズの問題が大きくなるという課題があった。そこで、本事業ではこの問題を解決するために最適な設計手法を確立することを目的とし、熱および電気特性に関する物性測定、シミュレーション、試作品の評価まで一貫して支援することをめざす。これにより、設計の短期化とコストダウンおよび信頼性の高い製品開発が可能になると考える。

2.内容

計算機の高速大容量化によって比較的詳細な計算が可能になってきたが、シミュレーションの精度は入力値に依存するため、精確な物性値を入手することが重要である。しかしながら、熱物性値等は不明な場合が多いため、実測が必要になる。最近では複層材や電子部品のように材料が複合的に構成されるものを扱うことが多いため、これらに対応した測定方法の開発を行う。また、シミュレーションを行うにはメッシュの生成や伝熱、電磁界それぞれの物理現象に適したモデルの作成が必要であり、同じ製品であっても解析手法が異なる。そして、すべてを詳細に解くことはまだ不可能であるため、精度を落とさずに簡易化する手法を開発する。

3.成果

熱物性値、電子部品の熱抵抗、高周波領域における誘電率等を測定し、それらの結果をシミュレーションに反映させることができるようになった。過渡熱抵抗測定による電子部品の測定では熱的な構造がわかるため、詳細モデルから簡易モデルの作成、従来は難しかったグリースの熱抵抗の評価などに活用でき応用範囲が広がった。また、シミュレーションでは最適な計算条件を導き、同一の筐体に対して放熱および電磁界に関するシミュレーションをそれぞれ行い、熱・電磁ノイズの評価を同時に行えるようにした。

設置機器

機器名称 型式・性能 製造所名 設置年月日
過渡熱抵抗測定装置 T3Ster メンター・グラフィックス・ジャパン(株) H23.11. 9
デジタルマイクロスコープ KH­7700 (株)ハイロックス H23. 9.29
熱拡散率測定装置 LFA447­NS22
Nanoflash
ネッチ社 H23.12.20
熱流体解析装置 SCRYU/Tetra
熱設計PAC
CADThru
(株)ソフトウェアクレイドル H23.11.15
電磁界解析装置 SEMCAD X Schmid & Partner Engineering H23.11.29
熱伝導率測定装置 HC­074/200 英弘精機(株) H24. 1.18
高周波材料特性測定装置 E5071C・
85070E・
CSH2­APC7・
CSH5­20D
アジレント・テクノロジー(株)/
(株)関東電子応用開発
H24. 1.31

重点研究、共同研究および指定研究

研究題目 電子制御機器の設計効率化の研究
研究区分 重点
指定分野 CAE
研究概要 重点事業のとおり

 

研究題目 CAEを活用した樹脂部品の設計技術の開発
研究区分 重点
指定分野 CAE
研究者 (機械金属部)○村田真伸、奥田崇之、西脇武志、足立廣正、加藤峰夫、高橋鉱次
(材料化学部)岡本和明、原田征、二村道也、伊藤清治
研究概要 1.目的

樹脂材料は構造解析に関する材料物性データベースの構築や解析材料モデルの基礎的な検証などが十分なされていないこともあり、構造系のCAEが十分活用されているとは言いがたい。本研究では樹脂材料に対する構造解析技術を開発して、樹脂部品の効率的な設計手法の確立を目指す。

2.内容

樹脂材料は引張試験において試験片にネッキングが発生するため、引張試験の結果(公称応力­公称ひずみ関係)をそのままCAE用の材料物性値(真応力­真ひずみ関係)に変換することはできない。そこで本年度はネッキング部のひずみ計測にデジタル画像相関法を活用することで、効率的に真ひずみ­真応力関係を推定する手法を検討した。

3.考察

デジタル画像相関法を活用してネッキング部の幅及び引張方向ひずみを測定することで、樹脂材料の真ひずみ­真応力関係を効率的に推定できることがわかった。また、樹脂試験片に対する高速引張試験を実施することで、樹脂材料の最大公称応力に対するひずみ速度の依存性を明からにすることができた。これらの結果をCAE材料構成モデルの材料パラメータに反映させることで、CAEの予測精度向上が期待できる。

 

研究題目 X線CT3次元測定によるバイオプラスチック製品の高品位化
研究区分 重点
指定分野 CAE
研究者 (材料化学部)○岡本和明、小田三都郎、石垣友三、二村道也、林英樹、原田征、伊藤清治、安田良、(機械金属部)足立廣正、村田真伸、加藤峰夫
研究概要 1.目的

低炭素社会の実現を目的として、自動車や電化製品にバイオプラスチック(BP)の採用が進められている。しかしながら、BPは成形時のひけやそりが大きく寸法精度が低い。そこで、X 線CTを利用した寸法や欠損の3次元測定を利用した「デジタルものづくり」による高品位化について検討する。

2.内容

測定の基本となる高品位なCT像を得るための手法について検討した。成形体内部の樹脂やフィラーの配向状態を広範囲で調べる手法を開発するため、指標物質を用いたガラスファイバーの配向観察を行った。

3.考察

バックグラウンド、透過画像の積算による1次データのノイズの低減がCT像の高品位化に大きな効果を果たした。指標物質の利用では、ガラス繊維の直接観察に比べ1000倍以上の体積にわたる繊維配向の評価が可能となり、製品全体の内部構造の可視化のめどがついた。

 

研究題目 セラミックスの耐熱部品および耐摩耗部品への応用に関する研究
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (機械金属部)○橋井光弥、本田直子、山崎実、山田隆志、高橋鉱次
研究概要 1.目的

熱衝撃・熱疲労への耐性に優れ、加えて、容易に機械加工できるセラミックス、六方晶窒化ホウ素(h­BN)焼結体の製造技術を開発する。従来法よりも環境負荷を大幅に低減して低コストで製造する技術を確立する。本材料は、熱処理設備向けのセラミックス部材等への利用が期待できる。

2.内容

本研究で得た「h-­BN/長石-複合焼結」シーズの活用を希望する中小企業が現れ、本年度は実用化の検討に軸足を置いた。現場設備を用いた試作や、他社設備を借りた実験といったことを優先的に実施した。特に、h-­BN粉末・長石/混合のプロセス開発に注力した。

3.考察

h-­BNは難焼結材であるので、バルク化のためには、従来法では、非酸化性雰囲気を保持しつつ1900K以上(通常は2300K以上)で加圧焼結する必要があった。本研究では、酸素を多量に含有するh-­BN粉末を原料とすれば、1100K以下の低温で無加圧で容易に焼結できることを見いだした。

 

研究題目 ナノ技術を応用した表面機能化に関する研究
研究区分 共同(産業技術総合研究所)
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (電子情報部)○八木橋信、村瀬真、粟生雅人、竹内満、(材料化学部)山口浩一、村瀬由明、安田良
研究概要 1.目的

単分子膜をアルミニウム(Al)表面に被覆し、Al本来の光沢を維持したまま、防食性を向上する 手法の確立を目的とした。また、中小企業がこれらの市場に参入する可能性を高めるため、高額な機器を必要としない単分子膜被覆処理の簡便な手法の確立を目指した。

2.内容

Al等の金属やガラスに対して単分子膜被覆を行う処理手法を検討すると共に、静的接触角が低く従来の理解では親媒性に見える一方、固/液界面の相互作用が少なく滑落性の高い疎媒性表面の開発を通じて濡れ性に関する研究を進めた。

3.考察

単分子膜被覆により、主に着目していたAlの防食性の向上だけではなく、分子が持つ本来のカップリング機能の積極的な活用や、異なる金属・素材表面の濡れ性の制御などが可能であることが認められた。また、確立した処理手法は実用的な幅広い分野へ応用可能である。

 

研究題目 燃料電池の開発と応用
研究区分 共同(名古屋大学)
指定分野 環境対応技術
研究者 (電子情報部)○宮田康史
研究概要 1.目的

燃料電池は発電効率が高く、環境負荷が低い次世代の発電装置として、内燃機関の代替や分散型電源、可搬型電源などへの応用が期待されている。これまで行ってきた燃料電池材料の開発を進め、低温から中温域で作動する無機系電解質の薄膜化を行った。さらに、新規な構造を持つ炭素材料の開発を行い、電池材料への適用を検討した。

2.内容

無機系電解質の開発を進め、50μm以下の薄膜電解質の作製に成功し、常温から150℃までの広い温度域でプロトン伝導抵抗の低減が可能となった。また、燃料電池の構成部材である炭素材料に注目し、ナノレベルで構造制御された新規材料の開発を行い薄片の集合体や高撥水体を得て、電池材料の表面処理や電極材料への応用を行った。

3.考察

幅広い温度域で作動する無機系電解質の薄膜化により伝導抵抗が低減でき電池性能を向上させることができた。今後、全固体燃料電池の実現に向けて電極への無機系電解質の適用を進める。また、多様な炭素材料を試作して電池への適用を検討していく。

 

研究題目 無機系排水からの有価金属回収
研究区分 共同(名古屋大学)
指定分野 環境対応技術
研究者 (材料化学部)○木下武彦、武田卓也、野々部恵美子、柴田信行、小野さとみ
研究概要 1.目的

我々は、非イオン性界面活性剤を用いた連続向流泡沫分離法を開発し、希薄溶液からの金の選択分離回収が実施可能であることを示してきた。本研究では泡沫相へ導入する溶液組成の分離特性への影響を明らかにすると共に、装置のスケールアップへの指針を得ることを目的とする。

2.内容

泡沫相へ直接導入する金属溶液(金と銅の塩酸溶液)の金属初濃度や導入流量の違い等による分離特性への影響を調べた。安定した操作が可能な条件下で分離実験を行い、初濃度と導入流量を掛け合わせたパラメータ(金供給量)を用いて分離評価を行った。

3.考察

前年報告の界面活性剤溶液の導入流量の分離特性への影響と同様に、金属溶液の導入流量も過度に増大させると、金の回収を低下させる傾向にあることが分かった。泡沫相内の金属滞留時間が少なくなることで、泡沫との吸着が起こりにくくなる傾向にあるといえる。これは本装置にて処理量を増やす上で重大な知見と云える。

 

研究題目 炭素繊維強化プラスチックへの装飾めっき技術の開発
研究区分 共同(愛知県鍍金工業組合)
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料化学部)○三宅猛司、浅野成宏、加藤雅章、松本宏紀、林幸裕
研究概要 1.目的

炭素繊維強化プラスチック(以降CFRPと呼ぶ)は軽量で高強度を有する材料であり、航空機や自動車、スポーツ用品などに利用されている。これら素材上に装飾めっきを求める需要がある。そこで本研究では、CFRP上へのめっき技術開発を目的に行った。

2.内容

試験片はエポキシをマトリックス樹脂とした市販のCFRPを用いた。CFRP表面改質のために前処理としてクロム酸溶液に浸漬させることによるCFRP表面形態の変化とめっき膜の密着性について調べた。

3.考察

CFRP表面はクロム酸浴液に浸漬することで球状のくぼみを形成し、その浸漬時間が長くなるにつれ表面粗度は大きくなった。このような表面が粗化した状態にめっきを行った結果、良好な外観を有するめっき膜を形成することができた。また、密着性を調べた結果容易に剥離することが分かった。

 

研究題目 低銀鉛フリーはんだの接合信頼性に関する研究
研究区分 共同(中部エレクトロニクス振興会)
指定区分 信頼性技術
研究者 (電子情報部)○村瀬真、岩間由希、本田直子、竹内満、(材料化学部)加藤雅章、浅野成宏
研究概要 1.目的

代表的な鉛フリーはんだとして、銀を3%含んだSn­3.0Ag­0.5Cuが挙げられる。近年、銀価格の異常な高騰のため、銀の含有量を減らした低銀鉛フリーはんだが注目されているが、実績が少なく信頼性に不安要素があるため、低銀鉛フリーはんだの接合信頼性や作業性について検討した。

2.内容

従来品である鉛はんだSn­37Pb、鉛フリーはんだSn­3.0Ag­0.5Cuと、低銀鉛フリーはんだに分 類されるSn­1.0Ag­0.7Cu、Sn­0.3Ag­0.7Cu、Sn­0.1Ag­0.7Cuを用い、銅食われ試験、イオンマイグレーション試験、熱衝撃試験などの各種試験を通して、組成による性能の違いを検討した。

3.考察

今回行った、銅食われ試験、1,000時間のイオンマイグレーション試験、1,000サイクルの熱衝撃試験では、銀の含有量による明確な差が見られなかったため、低銀鉛フリーはんだの性能に期待が持たれる。今後、サンプル数を増やした再現性の確認や、より長期的な試験についても検討する。

 

研究題目 溶接ビード外観の定量的評価技術の確立
研究区分 共同(愛知県溶接協会)
指定分野 信頼性技術
研究者 (機械金属部)○毛利猛、川尻鉱二、山田隆志、山田博行、夏目勝之
研究概要 1.目的

溶接接合部の評価試験は破壊・非破壊の二つに大別され種々の試験法があるが、その中の溶接部の外観目視検査が最も簡便で基本的な方法である。この目視検査をより客観的にかつ定量的に評価するための溶接ビードの外観評価装置の開発を行う。

2.内容

外観評価装置で計測したデータは、スパッタやスラグ等の多くのノイズを含んでいる。そこで、溶接ビード付近のノイズを除去するプログラムモジュールを開発し計測データからノイズ除去を試みたところ、微小なノイズは残るもののスパッタやスラグに起因するノイズはほぼ除去できた。

3.考察

評価プログラムの評価項目の一つにアンダーカット値がある。生データではノイズによって目視とは異なる過大な計算値が出ていた。ノイズ除去を行うことによって目視に近い計算値を示し、新たに開発したノイズ除去プログラムモジュールの効果を確認することができた。

 

研究題目 有機電子部材の開発
研究区分 指定A
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料化学部)○林英樹、石垣友三、山中基資、(電子情報部)村瀬真
研究概要 1.目的

自動車や電子製品への利用を想定した有機材料の開発を行い、電子デバイスを作製することにより新たな機能部材としての工業応用を目指す。

2.内容

上記目的達成のため、1)新規電子機能材料の合成と評価、および2)素子特性評価技術の確立、の両項目での研究を遂行した。課題1)においては、新規架橋ジフェニルアミン型化合物および新規オリゴエーテルデンドロンオキセタンモノマーの合成を、課題2)においては、素子の作製プロセスに使用する既存設備の検討を行った。

3.考察

合成したジフェニルアミン化合物は、架橋ユニットや置換基によって電子物性を変えることができた。また、合成した新規オリゴエーテルデンドロンオキセタンモノマーは、NMRによる構造解析が行えたので、今後はこれをモノマーとした重合体への展開が期待できる。素子特性技術の確立においては、ボトムコンタクト型有機TFTの試作を進められることが分かった。

 

研究題目 難めっき素材への新しいめっき技術の開発
研究区分 指定A
指定分野 機能性・軽量部素材
研究者 (材料化学部)○三宅猛司、浅野成宏、加藤雅章、松本宏紀、林幸裕
研究概要 1.目的

めっきは多種素材上に行われているが、従来の処理方法では十分な密着性が得られない素材があり、それらに対するめっき技術開発の要望は多い。本研究ではケブラーに代表される化学繊維へのめっき技術開発とステンレス材においてニッケルを用いないめっき処理技術開発を目的に行った。

2.内容

ケブラー繊維では、繊維表面を改質させるための前処理としてオゾン水を用い、改質効果および密着性について検討した。ステンレスではウッドニッケル浴に代わる金属めっきとして有効なめっき浴種について検討した。

3.考察

ケブラー繊維では、オゾン水を用いた前処理により繊維表面に凹凸が形成されたが、十分な密着性を有するめっき膜を形成できなかった。ステンレスでは、ウッドニッケル浴の代替として銅ストライクめっきが有効であり、その密着性はウッドニッケル浴を用いた場合と比べ遜色ない結果であった。

 

研究題目 新規可視光応答型光触媒の開発
研究区分 指定A
指定分野 環境対応技術
研究者 (材料化学部)○岸川允幸、柘植弘安、川瀬聡、小野さとみ
研究概要 1.目的

酸化チタンは紫外光を照射することで光触媒として作用するため、酸化チタン光触媒の利用場所は外壁等の野外が主であり、紫外光の少ない室内での利用は少ない。室内利用を可能とする光触媒の開発が望まれており、高活性・高耐久性な可視光応答型光触媒の合成を目指す。

2.内容

酸化タングステンは可視光応答を示す光触媒だが、酢酸を始めとする有機物の完全分解ができない。酸化タングステンに無機物を担持させ、光触媒活性の向上を目指す。また、酸化タングステン表面を無機材料等で修飾することで耐アルカリ性を向上させる。

3.考察

Fe4[Fe(CN)6]3を担持した酸化タングステンの可視光下における光触媒性能が向上した。酢酸の分解反応および付随するCO2生成反応から、酢酸の完全分解が進行したと考えられる。Fe4[Fe(CN)6]3は混合原子価錯体であり、錯体内の電子授受が比較的容易に進行するため助触媒として作用したと考えられる。酸化タングステン表面のシランカップリング剤による修飾は上手く進行しなかった。

 

研究題目 熱物性評価技術の向上に関する研究
研究区分 指定A
指定分野 信頼性技術
研究者 (電子情報部)○高橋文明、近藤光一郎、梶田欣
研究概要 1.目的

電子機器の小型化あるいは高性能化に伴う発熱密度(単位体積当たりの発熱量)の増加が深刻な問題になっている。これに対して、シミュレーション技術を用いた熱対策技術、いわゆる熱設計を製品開発に活用する事例が増えている。本研究では、熱設計を行う際に重要になる熱物性評価技術の向上を図ることを目的として、以下の内容を実施した。

2.内容

現在、熱物性値の測定方法として広く用いられているレーザフラッシュ法を対象とし、レーザ光の強度分布による不均一加熱の影響とレーザ光の吸収率を上げるために用いられる黒化膜の影響とを分離して検討するため、黒化膜を必要としない等方性黒鉛の測定を行った。

3.考察

(独)産業技術総合研究所が「熱拡散率測定用等方性黒鉛」として頒布している認証標準物質の測定を行ったところ、得られた熱物性値(熱拡散率)が試験体の厚みによって異なることが明らかになった。今後は、数値解析の手法を用いて、今回生じた厚みによる測定値のばらつきの要因を検討して行く予定である。

 

研究題目 広域周波数の電磁波に対応した材料特性及び製品評価技術の開発
研究区分 指定A
指定分野 ICT
研究者 (電子情報部)○小田究、宮田康史、村瀬真、竹内満、(材料化学部)二村道也
研究概要 1.目的

電磁波に関連する材料特性及び製品評価として、本研究では次の2課題を抽出した。(1)MHz 域までの材料特性評価技術(透磁率、誘電率測定)の広汎な測定への対応及び信頼性向上(2)ミリ波を用いた製品評価・材料特性評価技術の開発

2.内容

(1)JIS規格推奨性状以外の試験体にも広汎に測定の対応できるように、測定系を検討した。
(2)送受信系の間に発生する定在波に対する方策を検討するとともに、試作された測定系を使用して、極性分子、樹脂、液晶等の透過・反射特性を測定し、ミリ波利用の有用性を確認した。

3.考察

(1)低域材料特性測定では、試料性状と測定プローブの寸法を勘案した補正を行うことが有効であり、精確度の評価が次の課題になる。(2)ミリ波送受信系内で定在波を生ずる条件が確認でき、方策を検討中である。更に上記実験から、ミリ波が水分や試料凝集状態に敏感かつ精確度も高く、測定手法の確立を目指した計装化が今後の課題である。

 

研究題目 機械要素部品の信頼性評価に関する研究
研究区分 指定B
指定分野 信頼性技術
研究者 (機械金属部)○児島澄人、深谷聡、山岡充昌、真鍋孝顯、松下聖一
研究概要 1.目的

機械要素部品(ねじ、歯車、バネ等)は適正な設計を行っても、実際の取扱いによって、不具合が生じる場合がある。不具合の原因はユーザーの誤った認識が多く、部品の適正な取扱い指標が必要になっている。そのため、実証的な検証を重ねて、部品の取扱いの問題点を提起し、適正化を図る。

2.内容

ねじの締め付け不良について、実証的な検証を行った。回転剛性の高い装置(旋盤)を用いて、各種のねじの締め付けトルクと緩みトルク、回転角による締め付け状態、および締め付けトルクと締め付け力との関係を調べた。

3.考察

市販の緩み止めねじは、同じく締め付けた通常ねじよりも、最大緩みトルクが低かった。また、ばね座金付きねじも同じであった。但し、両者とも初期の緩みが出た後、一定のトルクが掛からないと緩まなかった。このことから、ねじの性質を正しく理解して、取扱うことの重要性が分かった。

 

研究題目 射出成形品の残留応力評価技術の開発
研究区分 指定B
指定分野 信頼性技術
研究者 (材料化学部)○二村道也、原田征、林英樹、安田良、(電子情報部)宮田康史、小田究
研究概要 1.目的

射出成形品の破損解析および信頼性向上に寄与する技術開発を目的に、(1)溶融樹脂の流動状態、(2)冷却固化時の残留応力を成形品から読み取る技術について可能性を検討した。

2.内容

(1)プラズマ表面処理による樹脂流れの可視化について検討した。
(2)電磁波または顕微ラマン分光を利用した残留応力評価について検討した。

3.考察

(1)ある程度のエッチング効果は認められたが、樹脂流れを反映した表面は観察されなかったため、処理条件等について検討する必要がある。
(2)どちらの方法とも応力評価の可能性が認められた。試料調整や測定方法を確立するとともに、データの信頼性や精度について検討する必要がある。

 

研究題目 振動試験の試験パラメータ設定と振動解析ソフトウェアに関する最新動向調査
研究区分 指定B
指定分野 信頼性技術
研究者 (電子情報部)○井谷久博、吉村圭二郎、粟生雅人
研究概要 1.目的

振動試験は正弦波振動試験からランダム振動試験に移行しつつあるが、従来のノウハウでは複雑化する新たな試験に対応することができない。本研究では、ランダム振動試験に関する情報収集や振動解析ソフトウェアに関する調査を行い、それらの有用性について検討を行う。

2.内容

日本包装学会第20回年次大会と日本機械学会2011年度年次大会の学会、自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2011や第22回設計・製造ソリューション展(DMS)、第11回総合試験機器展などの展示会、振動解析と振動計測技術セミナーなどのセミナーに参加し、情報収集を行った。

3.考察

輸送関係の振動試験では実環境から振動試験のパラメータを一意に決定する一般的な手法は確立されていないが、新たな振動試験規格が複数発行されており、振動解析では伝達関数などを実際に測定し、解析に用いるパラメータにフィードバックしていく必要があることがわかった。